比類なき画家チャールズ・ストリックランド。またの名を、ポール・ゴーギャン

小説・エッセイ

公開日:2012/6/16

月と六ペンス

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : グーテンベルク21
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:サマセット・モーム 価格:648円

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本作は、かの後期印象派の巨匠、ポール・ゴーギャンをモデルとした伝奇小説です。

さて、美術史において後期印象派といえば、現代においても非常に人気のある画家を、数多く擁する時代であります。ゴッホやセザンヌ、ゴーギャン、マネやルドンなどなど…。名画家の代名詞のような画家たちが軒を並べ、現代美術への夜明けをもたらした時代…。

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―というようなことにまったく興味がない人に、本作は大変にオススメであります。むしろ、そういった知識はない方がいいかも知れません。

本作は、小説家である主人公“私”の視点から見た、画家チャールズ・ストリックランド(ゴーギャン)が綴られていますが、そもそもの“私”が、画業にまったく興味のない人間なのです(モノ書きなので当然ですが)。

そんな彼が、絵ではなく、ストリックランドという人物そのものの生き様に興味を覚え、惹かれていきます。
「冴えない見た目、貧乏。破天荒で破滅型の画家なのに、女性にモテまくるの変じゃね?」
という、いかにも普通な、読み手と完全に同一な目線から見た巨匠の姿が描かれ、画家に対する批評や分析ではなく、あくまで“一人のヘンなヤツ”を追っかける物語。

ちなみに、どれくらいモテるか、というと、自分を嫌っていた人妻が結局惚れて駆け落ちするくらいです(駆け落ち先で彼女はこっぴどくフラれて、服毒死しますが…)。

巨匠の生涯という意味でも、勿論、大変によくできていますけれど、妙な奴の生涯として読んでも、非常に楽しむことができるわけですね。

時折登場する、会話上での心理的な駆け引きなども、著者がMI6(イギリス情報局)あがりなだけに、妙にリアルで魅力的。画家を徹底して人間として扱った本作。伝奇小説としても、美術趣味への足がかりとしても、とってもオススメ!


ピエロすぎる、ダークさん

俗物な絵描きですいませんでした

画家の目に映るのは、画道のみ