詐欺盛りメイクで超人気のYouTuber・ふくれなの葛藤と成長――『ドブ女の逆襲』が心に響く

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更新日:2020/6/22

『ドブ女の逆襲』(ふくれな/宝島社)

 YouTuber戦国時代の今、多くの女性たちから支持されているのが、美容系YouTuberのふくれなさん。高校1年生の時から動画投稿をスタートし、2020年6月現在のチャンネル登録者数は138万人という、超人気YouTuberのひとりです。メイクや私生活の動画を中心に投稿している彼女は、すっぴんとメイク後の顔が劇的に違う“詐欺盛りメイク術”の使い手でもあります。先日、ふくれなさん初の著書『ドブ女の逆襲』(宝島社)が発売されました。

 かなりインパクト強めのタイトルですが、ドブ女とは自身の“すっぴん”をたとえる言葉として生み出した造語です。

 同書には、ふくれなさんがYouTuberになったきっかけや、過激な動画を上げていた過去、運命の彼氏・M君との出会いなど彼女の半生が綴られています。そして、彼女のアイデンティティの一部でもある、“容姿コンプレックス”を深く掘り下げているのが特徴です。彼女が容姿に悩むようになったのは中学2年生の頃……。

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「可愛い子っていうのは、パッチリした二重で黒目が大きくて、顔がちっちゃくてスリムな子。だって、雑誌やテレビに出ている芸能人やタレントさんもみんな、そんな感じやったし。(中略)
 一方で、私はというと……。
 奥二重やし、黒目が小さい三白眼。
 顔が大きくて、ホクロも多い。
 太ってはいなかったけど、だからってクラスで一番細いってわけでもない。
 つまり、可愛くない。私って底辺やん――。」

 自分の容姿に“絶望”したふくれなさんは「ブスやから」が口癖になり、どんどん卑屈になっていきます。

 30代に突入して久しい筆者はこの一文を読み、くせ毛が気になって縮毛矯正をしたり、眉毛のカタチが気に入らず細くしすぎたり、あの手この手でコンプレックスを隠そうと必死だった青春時代を思い出しました。

 ふくらみ続けるコンプレックスの反動から、メイクの腕を磨いてカラコンやアイプチなど、さまざまな武器を手に入れるふくれなさん。メイク技術が上がっていても、“可愛い”の呪縛にがんじがらめになっているようでした。

 そのため、自分のすっぴん顔を嫌い、メイク術を紹介する動画でもカラコン、まつエク、ベースメイクありの“すっぴん風メイク”で臨んでいたそうです。そんな彼女がメイクはもちろん、大切なカラコンを外したガチのすっぴん動画を上げるきっかけになったのは、最愛の彼氏・M君の提案でした。

「(メイク動画は)完全なすっぴんから見せないと、マジで参考にならないと思う。みんなは、ゼロからどんなふうにメイクをしているのかっていうリアルを見たいんじゃないの?」

 別のチャンネルでYouTuberとして活動していたM君のアドバイスが胸に響き、彼女は、ガチのすっぴん動画の公開に踏み切りました。

 さまざまな苦悩や出会いを経て「自分は自分でいいんかな」と思えるようになった、と話すふくれなさん。今まさに「自分はブスだから」と自信を失っているあなたにそっと寄り添ってくれる一冊です。

文=丸井カナコ