大林宣彦映画入門のつぎは『ランボー』究極攻略! 掟破りな『映画秘宝』が復刊後も期待を裏切らない!

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公開日:2020/6/24

『映画秘宝』7月号(双葉社)

 2020年4月に復刊した雑誌『映画秘宝』。復刊爆走号と銘打った6月号は異例の重版、亡くなった大林宣彦監督の特集が組まれた7月号(表紙はラベンダー色の『時をかける少女』出演時の原田知世だ!)も好調で、復刊3号目となる8月号が6月に発売となった。

『映画秘宝』8月号

 1995年に洋泉社から創刊された『映画秘宝』は、独自の視点から洋画・邦画問わず、メジャーからマイナーまで幅広いジャンルの映像作品を紹介、マニアックな執筆陣が揃い、名作はもちろんのこと、どんなしょうもない映画もアホなネタも面白がり、コアな読者を満足させる編集路線で突き進んでいたが、2020年2月、洋泉社が宝島社に吸収合併されることになり、同年3月号で休刊が決定してしまったのだ。

 それを知ったファンからは「こんな良質な雑誌をなくしてしまうとはけしからん」という声が上がっていたが、その声に押されるように元編集長らが「映画秘宝」の商標権を取得し、4月21日発売の6月号で双葉社より復刊、秘宝の悲報に接して意気消沈していた愛読者からやんやの喝采を浴びた(監督・脚本・編集を入江悠が務め、のん、塚本晋也が出演したショートフィルム『HIHO RETURNS』も作られた)。

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 復刊した後も「日本で唯一の掟破り映画雑誌」という独自路線は以前とちっとも変わっておらず、膨大な文字量と情報量の多さもそのままだ(もちろんそこが変わってしまったら『映画秘宝』でもなんでもないのだが)。

 復刊2号目の7月号では、巻頭で「永久保存版! 大林宣彦映画入門」と銘打って、今年4月に亡くなった大林宣彦監督を特集している。貴重な1986年の大林監督のロングインタビュー再録を始め、出演者や各界の映画通が寄せる大林作品の魅力について、自主制作も含む完全フィルモグラフィなどを収録、充実の内容となっている。

 発売されたばかりの復刊3号目の8月号は、上半身裸のシルベスター・スタローン演じるランボーが表紙だ。巻頭では映画『ランボー ラスト・ブラッド』の公開に合わせ、歴代ランボーの武装図鑑(!)と杉作J太郎による登場キャラをひとりで総選挙(!!)するという「『ランボー』究極攻略」という特集が組まれている。そういや『ランボー』といえばタイトルまで寄せてきた『ランボー者』(もちろん邦題で、原題は『STEELE JUSTICE』)という映画があったよなぁ……と思ってページをめくっていたら、やはりそこはさすがの「映画秘宝」、きっちり押さえてありました。

『ランボー』の次のページは、これまた筋肉てんこ盛りな「マ・ドンソク解体新書」。無敵のマ・ドンソクのはずが、実は怖いものが「ひよこ」(理由は誌面で!)という一面に、兄貴の優しさを感じてしまうことだろう。さらに「NEXT筋肉スター世界ランキング2020」「BRUCE LEE will always STRIKES BACK!!」と続き、なぜか巻頭からず~っと筋肉を見せつけられるという「映画秘宝」らしさ全開の内容となっている。

 そしてアメリカのアカデミー賞にも多くの作品がノミネートされるなど近年注目が高まっている配信作品を紹介する、先月号からスタートした「配信秘宝」は今月号も充実。Netflixで7月9日より全世界独占配信予定のアニメ『日本沈没2020』の紹介と小松左京原作版『日本沈没』の過去の映画・ドラマ版の総まとめ、さらにこちらも7月3日から配信されるNetflix版『呪怨:呪いの家』に合わせての『呪怨』シリーズをまるっと紹介する特集などがあり、コンテンツがありすぎて何を見るか迷っている人の心強いガイドになってくれることだろう。もちろん豪華執筆陣による連載も目白押しだ。

 来月号からは『映画秘宝』創刊25周年(おめでとうございます!)を記念した特集シリーズも始まるようなので、8月号を熟読しつつ、7月21日発売の9月号にも熱く期待したい。

文=成田全(ナリタタモツ)