あの人気作『焼きたて!!ジャぱん』の続編……なのか!? リアクションの超解説に思わず──「なんやて!?」

マンガ

公開日:2020/6/23

『焼きたて!!ジャぱん~超現実~(1)』(入江謙三:原作、橋口たかし:作画/小学館)

 かつて『週刊少年サンデー』に連載されていた『焼きたて!!ジャぱん』という漫画をご存じだろうか。主人公の東和馬が日本独自のパン「ジャぱん」を作るため奮闘するグルメコミックだ。漫画は好評で、2004年にはアニメ化も果たしている。そんな人気作が、ついに『焼きたて!!ジャぱん~超現実~ (1)』(入江謙三:原作、橋口たかし:作画/小学館)として帰ってきたのだ!

 本作の主人公・弘見大作は怒っていた。彼がかつて好きだった『焼きたて!!ジャぱん』という漫画やアニメに憧れてパン職人になったはいいが、夜遅くまで仕込みをしてマジメに働いてもあまり儲からないし、漫画やアニメのような華やかな世界や青春もない──そんな不満が鬱積していたのである。そう、この作品は前作が漫画やアニメとして存在する世界だったのだ。

 大作は父親や妹・小作(※シャーロットと読む)と一緒に、実家のパン屋を営んでいた。そんな彼のもとへ、日本で三番目の製粉会社・天竺桂(たぶのき)製粉の社長令嬢・天竺桂茜が現れる。彼女は大作たちが密かに「ジャぱん」を作っていることを知っていた。なぜなら大作たちの父親が「ジャぱん」を食べたリアクションで徐々に変化し、なんと「弘見ゴウ」になってしまっていたからだ! 『焼きたて!!ジャぱん』といえば食べた人間のリアクションのありえなさがウリだったが、そういう意味で本作は間違いなく続編といっていいだろう。

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 茜は「ジャぱん」は東京で作るべきだと提言。大作は乗り気だったが、実は茜が連れていこうとしたのは妹・シャーロットのほうだった。妹は天才だと聞かされていたからだが、シャーロットは行くことを拒否する。ならば、と茜は大作も東京に連れていくことを提案して、なんとかスカウトに成功するのであった。

 大作たち兄妹は東京へやって来たが、茜と共に意外な人物が彼らを待っていた。それは『焼きたて!!ジャぱん』の登場キャラクターであった松代健にそっくりの人物。茜によればコスプレだそうだが、日常もずっとその姿でいるうちに、身も心も松代になりきってしまったのだという。しかしその松代の腕は確かで、彼の作ったパンを食べた大作たちは、あまりの美味さに周囲がすべて松代の顔に見えてしまうという怪現象に見舞われる。漫画ならリアクションのひとことで済ませられるが、本作では「あまりの美味しさに視神経が驚いて、そう見えるようになった」と謎の超解説が。この辺が「超現実(スーパーリアル)」たるゆえんであろうか。

 松代の実力を認め、彼のもとで腕を磨くことにした大作兄妹。ある日、松代が作った「エース」と呼ばれるフランスパンを食べたふたりは、なんと合体してひとりになるという珍事を体験する。松代いわく「自然界には合体や融合する生き物は数多い。今まで融合し合体した人間がいなかった方が不思議だろう」だとか。そんな「大小作(ビッグシャーロット)」が作ったパンは、松代を大いに驚かせる。そこで松代はビッグシャーロットの「第一回ベーカリージャパンカップ」未成年部門への出場を決めるのであった。

 この後も、今度は河内恭介と同一人物だと称する男が現れたり、合体の解けた大作兄妹が大作の様子がおかしいまま大会に参加することになったりするなど、とにかく波瀾の展開が待ち受ける。ともすれば、本稿を読んで「何をいっているのかよく分からない」と思う向きもあるだろう。しかし、それでいいのだ。理解不能なリアクションこそが『焼きたて!!ジャぱん』の真髄というべきなのだから。分からないときは、こう叫べばいい。

「なんやて!?」

文=木谷誠