恐竜って羽毛生えてるの? 親子で読みたい最新学説の『きょうりゅうのずかん』

出産・子育て

更新日:2020/6/26

『きょうりゅうのずかん』(五十嵐美和子/白泉社)

 ひとむかし前まで、本のイラストに描かれた恐竜と言えば、こわーい「怪獣の仲間」でした。海面から顔を出した首長竜が喰らいつかんと口を開けてプテラノドンを威嚇し、トリケラトプスがティラノサウルスの腹に角を突き立て子どもを守る。雨空に稲妻が走り、遠くの火山は噴火し、海は限りなく黒に近い青緑……幼い日に読んだ恐竜本のイラストが「トラウマ」になっている大人も少なくないでしょう(筆者は青緑の海が今でも怖い)。

 昭和、平成、令和と時は流れ、「恐竜の学説」も変化してきました。90年代の映画『ジュラシック・パーク』を見たときに「えっ、恐竜ってシッポを引きずらないの?」「こんなに素早いの?」と驚いたものですが、最新の学説はさらにビックリ!

「ティラノサウルスには羽毛が生えている」のです。爬虫類ながら、鳥に近い体の構造・生態だったと考えられています。知っていましたか?

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 そんな、最新の恐竜学説をもとに描かれた、恐竜入門書が『きょうりゅうのずかん』 (五十嵐美和子/白泉社)。大人気の『でんしゃのずかん』『はたらくくるまのずかん』に続く、五十嵐美和子さんのコドモエのずかんシリーズ第3弾です。

 恐竜研究の第一人者・富田京一さん監修の、最新学説に基づいた重要な恐竜56種と同時代の動物16種が網羅されています。

 五十嵐美和子さんの描く恐竜たちは、とても精密で繊細でありながら、柔らかな羽毛の表現やどこか愛らしさを感じる表情をしており、動物園で会えそうな雰囲気を持っています。

 かつての怪獣の仲間ではなく、「動物の分類のひとつ」として描かれているので、本書を読んでトラウマになったり、恐竜が怖くなってしまったりする子どもは、まずいないでしょう。小さなお子さんの、「はじめてのきょうりゅう」にはピッタリです。

「ずかん」は、「きょうりゅうのたんじょう」で幕を開けます。

 46億年前から現代までの生物の大まかな変遷や時代の区分け、恐竜たちの時代区分などが紹介され、恐竜がたくさんいるぞ……と期待感が高まったところで、恐竜の図解が始まります。

 人気の高いティラノサウルスをはじめ、多くの恐竜たちの体は羽毛に覆われ、どこか軽やかに二本足立ちする姿は、鳥を思わせます。

 紹介欄には、恐竜の名前とその意味、体長、生きていた時代や場所などが掲載され、それぞれの特徴をわかりやすく説明してくれています。

 また、恐竜の説明だけではなく、「化石のできるまで」や「体の構造」なども図入りで教えてくれるので、容姿の先の興味がわいてきます。

 恐竜の紹介のあとは、現代に生息しているカメやワニといった古代から生き延びた生物たちや、「恐竜から鳥に進化した過程」などが解説されています。

「恐竜が鳥に進化した」という学説は、子どもたちのみならず、一緒に読む大人にとっても興味深い話にちがいありません。

 スピノサウルスは、「尾の化石」が発見されたと今年の4月末に発表され(英科学誌『ネイチャー』掲載)、幅広の尾で水中を泳いでいた可能性が高いとわかったそうで、急遽、五十嵐さんが最新学説にもとづいたスピノサウルスを描いたとのこと。

 まさに、とれたてほやほやの「きょうりゅう」の最新情報を、知ることができるのです。

 そして、本書の中でも特にオススメなのが、「きょうりゅうの おしごとを するには?」です。

 恐竜好きになった子どもが、その「好き」を続けていくためには「どんな勉強」をして、「どんな仕事」につけばいいのか、その手がかりがあります。

 無限の可能性を秘めた子どもの「大好き」「夢」を後押しする――そんな思いを、本書『きょうりゅうのずかん』から感じるのです。

 まずは、今はもういなくなってしまった恐竜たちに会いに行きましょう。

 子どもたちには新しい夢、大人は忘れた夢が、見えてくるかもしれません。

文=水陶マコト