ツッコみ役の兄と、シュールな弟のくだらない日常にニヤニヤしっぱなし!ニュータイプコメディ『本橋兄弟』

マンガ

公開日:2020/7/9

『本橋兄弟』(RENA/双葉社)

 男子のノリというものは、ときにおバカなものである。ぼく自身も多分に身に覚えがあるが、くだらないことに執着して馬鹿騒ぎしたり、真面目なトーンで悪ふざけしたりする。その光景は(いきすぎない限り)微笑ましく、時折、マンガの題材になることもある。男子高校生、男兄弟……。彼らが登場するマンガを読んでは、その言動にニヤニヤしてしまった経験のある読者も少なくないだろう。

『本橋兄弟』(RENA/双葉社)もそんな男子のノリを描いたマンガだ。

 メインキャラクターはふたりきりで暮らしている「本橋兄弟」。兄の貴也はバイトの虫で留年しており、弟の智也はシュールな価値観を持つ変人だ。この貴也をツッコミ役に、本作では彼らの何気ない日常が淡々と描かれていく。しかし、何気ないが、どこかが“おかしい”。

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 たとえば、智也が作ったキャラ弁。なんのキャラクターをモチーフにしたのかと尋ねる貴也に対し、智也は「俺」と答える。そうして弁当箱の蓋を開けてみると……。

 これにはさすがの貴也も絶句。もちろん、ぼくら読者も絶句だ。

 智也のおかしな行動はこれだけではない。寝ている貴也のベッドに氷を撒いたり、天井の穴の数を延々と数えたり、「おかえり」を言うためだけに貴也が入浴しているところに乱入したり……。もはや、おかしくないときがあるのだろうか、と思うほど。貴也もいちいちツッコんでいられず、智也をそのまま受け入れているフシがある。そんなふたりの様子がとてもシュールで、見ているだけでニヤけてしまう。

 また、貴也の周囲には智也以外にもユニークな人々が現れる。異様なくらい魔法少女に執着するイケメンのクラスメイト、本橋兄弟の姿を見て妄想を繰り広げる隠れ腐女子、毎日毎日学校まで会いに来るストーカー(自覚なし)。どの人物もちょっとだけズレていて、そのズレが貴也の日常をより一層おかしなものへと変えていくのだ。

 ところが、本作はただのコメディで終わらない。読み進めていくと、不意打ちのように本橋兄弟の生い立ちが明かされる。どうして彼らはふたりきりで暮らしているのか、他の家族はどこにいるのか。その秘密を知ったとき、読者は一気に本作の世界観に引きずり込まれるだろう。笑いと切なさのバランスが見事なのだ。

 ちなみに作者のRENAさんは『雷神とリーマン』というBLも手掛けているマンガ家。『雷神とリーマン』でもシュールな設定を活かしつつ、ときに胸が痛くなるような展開を見せており、笑いと切なさを織り交ぜる手腕に長けているのだと予想できる。

 そんな気鋭のマンガ家によるニュータイプコメディ『本橋兄弟』。疲れた日の夜、頭を空っぽにした状態で楽しんでもらいたい。

文=五十嵐 大

(c)RENA/双葉社