女のエゴは他人の人生を平気で狂わせる– 女の怖さに戦慄する渾身のルポ

2012/6/19

福田和子はなぜ男を魅了するのか―「松山ホステス殺人事件」全軌跡

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:松田美智子 価格:820円

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なんだろう、このじわじわくる怖さは。
エゴをむき出しにしたリアルな人間の記録というのは、つくづく不気味で後味も悪いものだが、それにしても本書には何か別種の怖さがある。自身の犯した殺人から逃げること14年11ヶ月、時効間近でつかまった福田和子の半生と公判記録を丹念に追った本書は、賢い女狐というイメージだけでは語れない福田和子の姿に迫るルポだ。

福田和子は意識的に「女」を使って男たちを動かす姿はまさに女狐だが、逃亡中に子供を気にかけ枕を濡らすうんぬん、いわゆる「母」としての側面も持ち合わせていたという。だが、決定的に大きく何かが欠落しており、見えてくるのは、自己を正当化するためには無自覚に他者を平気で貶めてしまう、「自己愛」の強さばかり…。ふてぶてしいとか生ぬるいものではなく、何か根本が間違っていることにすら気がつかない姿を見続けていると、なんだかひどく居心地が悪い。それは彼女の姿が異質すぎるから? 実は読みながら、どうやらそうでもないのではない気もしてきた。

  

誤解をおそれず言うならば、福田和子が晒しているのは、「女」のエゴの過激版で、多くの女性が隠し持っていそうな「独善的ズルさ」の究極の形みたいなものではないか。それを無自覚に、ご都合主義に、あっけらかんと見せつける(しかも肝心の罪の意識は、表面的な悔悛に終始する)のが福田和子なのだ。どこか内心、ドラマのあるド級の悪女を期待していたのに、フタを開けてみれば単なる「大嘘つき女」。その凡庸で陳腐な落差に驚愕する一方、案外、彼女のような女はどこにでもいそう、とも思う。

  

女の見栄や嫉妬、虚栄心…といった欲望には底知れない怖さがある。だが、そうした欲望は大なり小なりどんな女も抱えているものだし、いつ福田和子のように発動するかわからない。そんなリアリティを無意識に感じて戦慄した。

  

本書では触れていないが、福田和子は無期懲役判決を受けた数年後にくも膜下出血で亡くなった。その幕切れのあっけなさに、またもやなんともいえない気持ちになった。


目次より 前半は丹念な取材を元にした福田和子の半生を追う

目次より 後半は公判の傍聴記録を軸にしたルポ

プロローグより 本文のイメージは共通 写真などは特に入らない