胸キュンと爆笑が加速して止まらない!『覆面系ノイズ』福山リョウコが贈る、無駄にイケメン男子4人の青春劇!

マンガ

公開日:2020/7/8

『恋に無駄口』(福山リョウコ/白泉社)

 思い出は、たいてい無駄な時間に詰まっている。意味なんて、なくていいのだ。無駄話して、笑いころげて、なんにも残んなかったじゃーん!とまた笑う時間の積み重ねが、あんがい強固な未来への礎となるものである。そんな青春を爆走するのが『恋に無駄口』(福山リョウコ/白泉社)に登場する無駄にイケメンな男子・4人。

 好奇心をすべてあさっての方向に注いだ「無形文化遺産代行保存部(通称・無駄部)」をたちあげて、「食パンを咥えて走ったら本当に角で女子とぶつかり恋に落ちるのか?」「ツンデレは本当にモテるのか?」などなど、それを検証してどうなる!? な議題を日々追究している。活動報告のSNS写真は常にピンボケしているなど、全方向に無駄で残念であるゆえに、「無駄部」と呼ばれる。そんな彼らがおりなす暴走青春コメディである本作。恋愛モードが加速して甘酸っぱさの増した2巻も、笑いの渦はとまらない。

 たとえば、自分がモテ期と錯覚するわりに、幼なじみの美少女・芽李からの「好き」を全力で聞き流し続ける葵。芽李が他校の男子と仲良くしているのを見ればモヤっとし、デートすると知れば動揺し、どう見ても自分と両想いなのに他の男子との恋愛を応援する“鋼鉄鈍感星人”っぷりはもちろんなのだが、「おんどりゃ舐めとんのかワレェ!」とキレかえす芽李にも笑う。どうにか「俺とデートしない?」と素直に告げるところまでたどりつくも「初デートは成功するか」を検証テーマにあげられて、無駄部4人でエスコートの練習、映画館・美術館・カラオケのハシゴと、けっきょくバカ騒ぎに終始しているのも愉快である。

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 美の追求に余念のないかわいい系男子のシロにも、恋の波乱が。お相手は、ツンデレの見本のような生徒会長(名前も詰出/つんで)。1巻では不器用な彼女のツンデレギャップにまんまとハマったシロだけど、「恋愛なんてコスパわるい」「なんで僕が動揺しないといけないわけ」という防衛本能から“好き”の自覚には至らず。ところが生徒会書記の七三分吉(しちさん・わけきち)という唯我独尊系ライバルの登場によって、闘志を煽られる展開に。ちなみに、ツンデレの詰出さんとか七三分けの七三くんとか、かなりのモブキャラにつけられる名前だと思うのだが、キャラ造形と存在感が、主役4人を食う勢いで強いのも地味に笑える魅力である。

 1巻でいちばん進展していた少女マンガ大好き男子・仁科と、極度に意地っ張りな依麻の似た者同士な恋も順調に育まれているが、じつは無駄部でいちばんハイスペックと判明したマヤにだけは、やはりかけらもときめきの気配がない。実家は城のような大豪邸で、学年一の頭脳を誇るメガネ男子。しかし言動もいちばんぶっ飛んでいるので、誰も近寄りたがらない。そんなマヤがシロのコンプレックスを救った過去のエピソードや、「身長伸ばすより3年間思い出で腹いっぱいにして横に伸びたくね?」の名言には個人的にいちばんキュンときているので、3巻にはぜひとも彼がどメインの話が入ることを願ってやまない。

文=立花もも

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