「イヤイヤ」は発達のチャンス。子どもの不機嫌を味方につけて、コロナ禍でも機嫌よく

出産・子育て

公開日:2020/7/10

『ふきげんな子どもの育て方 どうして、いつもイヤイヤなの?』(湯汲英史/岩崎書店)

 着替えができた、ブロックができた、など、何かにつけて「できた!」「見て見て」と声をかけてくる子ども。可愛いし、面倒がらず丁寧に応えてあげたいけど、忙しいとつい生返事になってしまい、それが続くと子どもが不機嫌に。一度さわぎ出したら止められず、余計に手がかかってしまう…。誰しも一度は、そんな経験があるのではないでしょうか。

『ふきげんな子どもの育て方 どうして、いつもイヤイヤなの?』(湯汲英史/岩崎書店)によると、子どもの「できた!」「見て見て」は、2歳前後から始まる「社会的承認欲求」による行為。子どもはこの行為によって他者に承認を求め、それを得ることで、自己肯定感を育てるのと同時に、自分以外の人たちの“基準”を学んでいくのだとか。

 つまり、これは子どもの発達過程には欠かせない行動であり、「うちの子は他の子と違う」と心配になる必要はなし。ただし、中途半端な返事を続けていると、自己肯定感が育たない上に、他人の気持ちがわからない自己中心的な子に育ってしまうかもしれません。

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 ちなみに、5歳をすぎても、「これやっていい?」「これ食べていい?」と親の許可を求めてくるような場合は、承認欲求が十分に満たされていない可能性が。ちょっと大変だけど、簡単でもいいから、「さすがお兄さん」「お姉ちゃんだね」などとほめたり認めたりすることで、子どもの欲求は満たされるそうです。

 なるほど、と感じたのは、同じ「ほめる」という行為でも、その子によってベストのほめ方が違うということ。大げさにほめないと伝わらない子もいれば、1対1でこっそりほめてほしい子もいる。我が子にとってどんなほめ方がうれしいのか、それを見つけるには日々の観察が大事なのだと感じました。

 個人的に気になったのは、すでにできているはずの着替えなどを、親に「やって」と頼んでくるケース。これもまた、「1人でできるでしょ」と拒んでしまうと、不機嫌になりかねません。この行動が、特にコロナ禍の影響で保育園がお休みになっている間、自宅にいるうちに着替えができなくなってしまったのだろうか…と心配になりました。

 ところが、本書によれば、一度できたことができなくなることはないし、こんな風に声をかけてくるのは、やってもらうことが目的ではなく、親とのかかわりを欲しているから。心を満たしてあげれば元のように自分でやるようになるのだそうです。それを知ってホッと安心するのと同時に、自粛中にしつけを厳しくしすぎたかも…仕事で面倒を見られずに寂しい思いをさせていたかも…と反省。5〜6歳をすぎると子ども同士の関係が大事になって、親への甘えも少なくなっていくというので、今のうちに甘えさせよう! と心に誓いました。

 他にも、「約束を守れない」「思い通りにならないと攻撃的になる」「公共の場で大騒ぎする」など、50のケースが本書に紹介されています。困ってしまうけれども、クスッと笑えるイラストつきで、子どもの不機嫌についてサクッと楽しく学べます。

毎日の不機嫌を成長につなげて、親子が機嫌よく

 不機嫌と一言でいっても、その時々によって、その子のタイプによっても、理由や対策は違う。その事実を知って対応することで、子どもの不機嫌に対処できるし、子どもの発達を促していくこともできる。著者である公認心理師・言語聴覚士の湯汲英史さんは、巡回相談などで主に発達障害の子どもたちを見守っている、いわば、発達のプロ。不機嫌と発達のかかわりと対策を的確に示してくれる、その温かい視点がとても頼りになります。

 子どもが、自分の気持ちを「不機嫌」という形でしか表現できない段階から、自分自身で気持ちをコントロールしながら言葉で周りに伝えられるようになるまで。その成長のために、そして親がイラッとすることなく我が子を機嫌よく見守っていくためにも、本書が大いに役立ちそうです。

文=麻布たぬ