「SNSのストーカーにはどう対処?」「産休を取ると契約更新されない?」女性の身を守る法律知識

暮らし

更新日:2020/7/10

『おとめ六法』(上谷さくら、岸本学:著、Caho:イラスト/KADOKAWA)

 職場、家庭、恋愛。女性である故に遭うトラブルは数多い。そんなトラブルで被害者になった時、自分を責めてしまう女性は少なくない。また、勇気を出して友達やパートナーに打ち明けたら「自分にも隙があったんじゃない?」なんて言われて、2度傷つくことだってある。悲しい目に遭ったのは自分なのに、罪を犯したのは相手なのに「私が悪かったのかなぁ」と泣き寝入りすることはあってはならない。ではそんな時どうするか。未来への第一歩を踏み出すために、この本で「法律」に触れてみよう。

 本書『おとめ六法』(上谷さくら、岸本学:著、Caho:イラスト/KADOKAWA)では女性が遭遇することの多いトラブルを「恋愛」「SNS/インターネット」「学校」「くらし」「しごと」「結婚」の6つの章に分けて構成されている。

 著者は2人の弁護士の先生。いじめ、セクハラ、DV、ストーカー…など、トラブルでよくあるケースを事例として挙げ、「そのケースにはこういう法律があってこういう判断が法的にはなされ、こういう手続きを取ることができる」という流れをわかりやすく解説してくれている。内容はかっちりしているけれど、ふんわりしたイラストとそこに添えられた詩的な言葉が読む人の心に寄り添ってくれる。まさにタイトルの「おとめ六法」にぴったりだ。

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 ここで内容の一部をご紹介しよう。

トラブルに遭った時の証拠集め

事例 :いじめに遭っているけれど証拠を録音したらプライバシー侵害にならないのか?
弁護士さんのアンサー =相当な範囲であれば不当行為とはならない。

 いじめ、パワハラ、セクハラなどの被害に遭った時にもっとも直接的に証明できるのが発言の録音だ。プライバシーの問題だが、正当な目的のためであり相当な範囲であれば不当行為とはならず証拠としても有用性が認められる。ただし録音を使って仕返しに謝罪や金品を要求などすると、脅迫罪にあたるので注意が必要だ。

仕事と妊娠

事例 :契約社員として勤めていたが妊娠したため産休を取ろうとしたら契約更新をしないと言われた
弁護士さんのアンサー =契約社員でそもそも雇用期間が数年間とされている場合でも妊娠を理由とした雇い止め(契約不更新)は禁止されています。

 女性は妊娠や出産のために、どうしても仕事を制限しなければならない時期がある。交渉の際、職場側がよく口実にするのは「妊娠を理由にしたのではなく、雇用期間が満了した、勤務成績が不良だった」という理由。そのため、この説明を覆すような資料を可能な限り確保して、職場に対し雇い止めを承知しないことを伝えよう。それに会社が応じない時は、労働局の総合労働相談コーナーへ行き、労働局からあなたを復職させるなどの内容の助言・指導をしてもらおう。それでも解決しない時は「あっせん(労働者と会社の間に労働の専門家が入り話し合いや解決案を提示する無料の制度)」を使用することもできる。

SNSで恐怖を感じたら

事例 :ストーカーにSNSでつきまとわれている。ブロックすれば収まる?
弁護士さんのアンサー =いきなりブロックすると逆上する危険性がある。

 拒絶されたと感じたストーカーに居場所を探されたり、家に押しかけてくる可能性がある、かといって返信するのもストーカーとの関係性を継続することになってしまうためやめるべき。ブロックも返信もせず、画面をスクリーンショットで保存して警察に相談しよう。証拠があると警察もスムーズに動きやすくなる。

 この本で扱われているテーマの広さを見ると、物心ついてから一生を終えるまで女性の人生にはこんなにもたくさんの困難が待ち受けているのかと驚かされる。若い時だけじゃない。年をとってもだ。だからこそ「女性のための法律の本」はこの世に必要だなと痛感する。一生何事もなく、平和に生きていけたらどんなに幸せだろう。けれどそうもいかない以上、何かあった時泣き寝入りして自分を責めぬよう、この本をいつも側に置いておこう。

 私たちは法律で強くなれる。自分だけのためじゃない。「誰かのため」になる可能性だってあるのだ。

文=線