与沢翼がコロナの影響を受けなかった理由とは――その答えは『お金の真理』にあり

ビジネス

公開日:2020/7/16

『お金の真理』(与沢翼/宝島社)

 2020年の上半期、人々の生活を直撃した新型コロナの大流行。感染拡大防止策やマスク姿の人々、リモートワークの実施など、この半年間で世界の景色が一変した。また、多くの人が今回のコロナショックによって自身の収入面に大きな不安を感じたはず。

 実業家・与沢翼氏の著書『お金の真理』(宝島社)は、人生の荒波に揉まれた経験をもとに、“お金”や“人生”の本音を綴っている。与沢氏は、今私たちが直面している危機的状況は、今後の人生を大きく左右する「非常に重要な時期」だと指摘している。

 彼は「楽観的な人は死ぬ」というコラムのなかで、将来の不安と真剣に向き合い、早めに対策を取る重要性について説いている。与沢氏は、かねてからドバイやバンコクなど、海外にある自宅からリモートワークをしているため、コロナ禍の影響をほとんど受けていない。彼が以前から組織やオフィスを持たない働き方を実施していた理由は、今回のような「経済停滞の緊急事態が起きる可能性」を頭の中に描いていたためだという。

advertisement

もちろん、ウイルスが流行するパンデミックの形を具体的に想像できていたわけではありません。(中略)まったくもって想定外のことでした。
 しかしながら、すでに経営者となっていた二十代後半で体験した2011年の東日本大震災のことが私は忘れられず、あれ以来、人間が抗うことのできない天変地異の発生を常に恐れ、対処を怠ることはありませんでした。

 東日本大震災から学び、いつか起こりうる危機に備えた結果、彼の生活が脅かされることはなかった。備えあれば憂いなし、口で言うには簡単だが、彼のように輪郭が見えない不安に備えていた人は少数派だろう。

 与沢氏は、長い時間をかけて漠然とした不安に対する“具体的な対応策”を練っていたため、自分の生活を守ることができたのだ。そして彼は、コロナショックで表面化した「自分の脆弱性」を今こそ潰しておく必要がある、と綴る。自分の弱さや不安と向き合うのは勇気がいるが、今がそのときなのかもしれない。

 コロナショックとの向き合い方のほかに、与沢流の“お金術”が余すことなく記されている本書。たとえば、お金を使うことについても、持論を展開している。日本にいた頃の与沢氏のイメージといえば「秒速で1億稼ぐ男」。当時は豪快な散財や華やかな交友関係が話題だったが、現在の個人消費は激減。自分のための出費は月3万5000円程度に抑えているという。ちなみに、彼の純資産は70億(!)もあるので、お金がないわけではない。なんでも、今は家族や知人など大切な人々と過ごすときに、躊躇なくお金を使っているそう。

自分がお金を使うのを我慢するのはコントロール可能なことであり、実は簡単なことです。一方でお金で少しでも周りを笑顔にすることができるのであれば、そんな笑顔を見て自分も幸せになれる分、結果的に自分の最大の原動力にもなります。

 与沢氏は「お金の使い方は、自分にだけ厳しく、周囲には寛容的であってほしい」とアドバイスを送る。“自分に厳しく”は、お金の使い方に限らず、家族関係や仕事などさまざまな場面に応用できそうだ。

 自らに厳しく、家族を愛する与沢氏。そんな彼のTwitterには奥さんとお子さんがよく登場する。実業家としての鋭い視線とは違う、やさしい父の顔がうかがえるので、ぜひ一度覗いてみてほしい。

 お金とは何か、本当に大切なのは誰か、読者にひとつの“答え”を提示してくれる一冊だ。

文=丸井カナコ