同じ「一目惚れ」でもなんか違う!? 奥手女子×犬系女子の学園ラブコメディ!

マンガ

公開日:2020/7/17

『ささやくように恋を唄う』(竹嶋えく/一迅社)

 時折、出会った瞬間に不思議な魅力を感じる人がいる。単純に顔が好きというパターンもあれば、何かそれ以外のものを感じる場合もあり、「一目惚れ」というのは不思議なものだ。そしてこの「一目惚れ」は、動物や好きなアーティスト、雑貨など何にでも起こりうることで、決して恋愛感情だけではない。『ささやくように恋を唄う』(竹嶋えく/一迅社)は、そんな「一目惚れ」が起こした勘違いから始まる物語だ。

 主人公は、新しく高校生になった木野ひまり、そして同じ高校に通う3年生の朝凪依の2人。高校入学初日、ひまりは友人である水口ミキに、新入生歓迎会で行なわれるバンド演奏を見に行こうと誘われる。そしてこのバンドのボーカルを務めていたのが依だったのだ。ひまりは依の歌声、そして歌う姿に一目惚れし、ファンとして虜になってしまう。そしてたまたま見かけた依に、「わたし 一目ボレしました」と伝えたのだった。

 一方、依は突然見知らぬ後輩に声をかけられ驚くが、自分に告白してきたひまりのことを「可愛いな」と感じ、その笑顔に一目惚れしてしまう。そしてこの依の一目惚れは、恋愛対象としてだった。

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 後日、ひまりの思いは恋愛ではなくファン感情であると知った依は、勘違いで惚れてしまった自分はどうすれば…と愕然。しかし諦められず、ひまりをもっと惚れさせると決意。今まで恋愛とは無縁だった依は、これからひまりとどう接していくのか――。

 奥手でクールな依に対し、ひまりは天真爛漫で人懐っこい性格。依のひまりを思う気持ちなんて知るよしもなく、彼女はぐいぐい懐いて依を戸惑わせる。しかし依にとって、そんなひまりがまた可愛くて仕方がないのだ。奥手な人にとって、素直に感情表現できる人というのは魅力的に見えるもの。こんなにストレートに「好き」の感情をぶつけられたら、筆者だって惚れてしまうかもしれない。ずるいぞ、ひまり!

 そして著者である竹嶋えくさんの描く絵がまたキラキラとしていて、勢いとハリがあって、ひまりの魅力、そして依の時折見せるほわっと照れる表情を見事に引き立たせているのだ。

 この『ささやくように恋を唄う』は、マンガ雑誌『コミック百合姫』(一迅社)で連載されている百合ものだが、過激な描写もなく「憧れの延長線」といった雰囲気で、普段百合作品を読まない人でもきっと抵抗なく楽しめるはず。2人のピュアな関係に癒されること間違いなし! ひまりと依を見ていて、筆者も久々にドキドキしたくなった。

文=水音(月乃雫)