フィリピンのホームレス邦人は日本社会の犠牲者か? 矛盾を照らす真摯なルポ

2012/6/21

日本を捨てた男たち ― フィリピンに生きる「困窮邦人」

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 集英社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:水谷竹秀 価格:1,296円

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果たして彼らは日本を捨てたのか、それとも日本に捨てられたのか。そんな疑問が読みながら頭の中を行ったり来たりした。女性を追って、借金から逃れて、自由を求めて…それぞれの極めて個人的な理由でフィリピンにわたった男たちが資金を使い果たし、「困窮邦人」とよばれるホームレスになり、心やさしい比人の貧困層に助けられているという状況が、現在静かに社会問題化しつつあるという。日本ではあまり知られていないその実像は、まさに日本社会の「矛盾」のふきだまり。正直なところ、自業自得、他人(比人)の親切心につけこむ、日本人の「甘え」では? と、そのダメさ加減を断罪するのは簡単だ。

だが、彼らが日本に「置いてきた」現実はどれも行き場がなく、いまどき1度ボタンの掛け違いが起きてしまうと一気に「転落人生」というのはお決まりのルートなのか、誰もが血縁者にも拒否され、日本に帰ったところで「厄介者」になるしかない現実を抱えている。彼らにしてみれば、ホームレスをするのが日本かフィリピンか、そんな究極の状態なのだろう。どちらにせよ八方塞がりなのだ。

ちなみに登場するのは、ほぼ男性ばかり。一応、比人男性を頼って海を渡った邦人女性も出てはくるものの、彼女たちは自分のポジションに対してかなり客観的で、たとえば騙されている、とわかったら、その時点であっさり身を引く。だからそこまで最悪な状況に陥りにくいが、なぜか男性は未練故かプライド故か、最悪の状況でもかの国で「ただ生きている」状況を選択する。その現実のしょうもなさに脱帽しつつ、どこかやはりと納得。女たちのたくましさ、男たちの悲哀に、なんかホントに大変、とため息も出てしまう。

なお、時に同情し、時に距離をおき、答えのでない問題に、とにかく真摯に対応しようという著者のスタンスは正直で好感がもてる。今回、電子書籍で社会派ノンフィクションを読んだのは初体験だが、容易に自分の立場が決められない問題に対峙する場合、電子書籍という「重みを感じない」メディアのせいか、リアルな本よりも、読みながらスタンスを自在にスイッチできる感じもした。こういう感覚、困難な現実を相対化するにはグッドなのかも。


目次より

第1章の冒頭より この後、ホームレスの日常がリアルに描かれる

時折写真も。女性は困窮邦人を援助する屋台のおばさん

海外で経済的に困窮状態に陥っている在留邦人=困窮邦人だ

困窮邦人の数はフィリピンが圧倒的なのだ