子供の自己肯定感をマックスにする“ルール”がある? 英国発・世界24か国翻訳のベストセラー本が日本上陸!

出産・子育て

更新日:2020/7/23

きみはスゴイぜ!
『きみはスゴイぜ!』(マシュー・サイド:著、竹中てる実:訳、伊沢拓司:日本語版序文・解説/飛鳥新社)

 うちの子をやる気にさせたい…親ならだれもが思うはず。そこで朗報だ。英国で30万部のベストセラーとなり、現在24か国で翻訳されている『きみはスゴイぜ!』(マシュー・サイド:著、竹中てる実:訳、伊沢拓司:日本語版序文・解説/飛鳥新社)がついに日本に上陸したのだ!

 本書は親と子供のやる気をサポートする1冊だ。ただいっておくが本書は子を持つ親のための教育指南書ではない。子供自身が読む本であり、あくまで自発的に「なぜやる気がでないのか」「どうやったらうまくなるのか」を知ることができるものだ。もっとも、難しい言葉づかいも中にはあるので(特にあなたの子が小学生ならば)、親の側でも質問を受けられるようあらかじめ準備をしたほうがいいだろう。

 本書のテーマは「ごくふつうの子はみんなスゴイ子になれる」である。

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“きみ”、つまり子供は、皆、大きな可能性を持っている。よくいわれることだが、信じられない人も多いだろう。なぜなら子供たちは「既に色々なことを試してうまくやれない」ことを経験しているだろうからだ。

 ただ親であるあなたは、けしてそんな風に思わないことだ。

 本書の著者マシュー・サイド氏は、元卓球の全英チャンピオンで金メダルを獲得している。だが彼は「ごくふつうの子だったけど、分かれ道で卓球チャンピオンになる道を選んだスゴイ子」だという。

 子供の中に眠っている能力を、引き出し実現する方法を、マシュー氏は自分を例に説明している。興味をそそられる対象や趣味は、人によってちがう。でも、うまくなる方法や、夢を実現するための戦略は実は同じだという…。がぜん、親子で読んでみたくなったのでは?

マインドさえ変えればきみもスゴイ子になれる?

 本稿では主な2項目について紹介したい。ひとつは“きみの心にブレーキをかけているものの正体”の章で語られるマインドセット。もうひとつが“人生を変えちゃう「マージナル・ゲイン」って?”で語られるマージナル・ゲインである。

 子供ががんばれない、やる気がでない、それには理由がある。スタンフォード大学教授・心理学者のキャロル・ドゥエック氏は、若者たちのマインドセットについて調査を行った。マインドセットこそがきみにブレーキをかけたり、逆に上手になれるように手助けしてくれたりする張本人だと示した。

 まずネガティブなマインドセット、これを「かちこち系マインドセット」という。何かスゴイことをやってのけるのは、生まれつき才能や資質がある者に限られるという「心の持ち方」だ。何かの達人になる人には、この世に生まれ落ちた瞬間にもう才能が脳に備わっているという考え方だ。ドゥエック氏によると40%の若者がこのマインドセットを持っていた。彼らは思いこむと何もしなくなる。向いていないと思い、その結果努力をしなくなる。

 対照的に、なんでもうまくなる人たちが必ず持っているのが、「しなやか系マインドセット」(別名「成長マインドセット」ともいう)。一流サッカー選手やアカデミー賞を受賞する俳優、クラスで数学がいちばんの子…彼らは自然と持っている。ただこの「しなやか系マインドセット」は、能力は生まれつき決まっているわけじゃなくて“変えられる”という考え方だ。この2つの差をあらわした図が以下になる。

きみはスゴイぜ! p.70-71

「しなやか系マインドセット」はネット通販で買うことはできない。でも持つように心がければ、持てるようになる。“やる気”を持って、練習を重ねれば、いくらでも能力を伸ばし、高めることができる、とマシュー氏は語っている。

 マインドセットを持たせることは難しいように思える。でも我が子にこう教えるためにまず自分たち親が「しなやか系マインドセット」を持って接していくべきなのだと感じた。

 まずは「しなやか系マインドセット」に変えるための一歩として、カンタンな「リフレーズ」(使う言葉を変えてみること)からやらせてみてはいかがだろうか。

きみはスゴイぜ! p.73

小さな改善のサポートが金メダルのような大きな結果を子供にもたらす!

 マインドセットを変えることに加えて、能力を開花させるためには努力ももちろん必要だ。それがいちばん難しいと親であるあなたは考える。ただ本書には具体的に、画期的なアイデアが示されている。そのひとつが「マージナル・ゲイン」だ。

 大きな目標を小さなパーツに分解し、その一つ一つに「マージナル・ゲイン(=ほんの小さな改善)」を加えて、そのほんの小さな改善をあわせて全体のパフォーマンスを大幅に改善するという作戦だ。要するにマージナル・ゲインとは、「いい変化につながる小さなことを見つけて一つ一つ変えていくこと」である。

 これによって著者のマシュー氏は子供の頃にランニングのタイムを大幅に短縮した。英国の女子ホッケーチームは2年で金メダルを獲得した。そしてこれは、わたしたち親もうれしい「テスト対策」などの勉強にも生かせるのだ。マシュー氏が成績アップにマージナル・ゲインの手法をどう応用したのかを見てみよう。

きみはスゴイぜ! p.162-163

 親がサポートするポイントとしては、本書から引用すると「改善した箇所に効果があったかどうかを、ときどき確かめる。さらに改善する」「改善に新たな試みや手直しが必要なら、どんどん行う」「根気強く、つねに冷静に、そして集中させる」ことだ。

 日本語版である本書は、2人の日本人の例を挙げている。まず卓球の伊藤美誠選手。多くの人は天才卓球少女で、小さい頃から楽に勝ってきたと思っているかもしれない。だが彼女はたくさんの努力をし続けてきた。でも勝負は水物。2016 年のリオデジャネイロ・オリンピック女子団体戦・準決勝で敗退。ただ彼女は「しなやか系マインドセット」を持っていたのだと思う。立ち直り、直後の3 位決定戦でダブルス、シングルスの両方で勝ち、銅メダルを勝ち取った。もちろん東京では金色のメダルを目指しているだろう。

 そしてもうひとりがバスケットボールの八村塁選手。日本人初のNBAドラフト1位指名。恵まれた体格を生かした当たり前の活躍? 実はそうじゃない。高校卒業まで日本で育った彼は英語が大の苦手だった。チームスポーツはコミュニケーション能力と言語が、運動能力やスキルと同じくらい重要だ。彼は高校3年から、英語の猛特訓を始めた。バスケが終わると毎日 8 時間勉強した。それでもアメリカの大学でチームメイトとうまくコミュニケーションがとれなかった。そこでまたまた猛特訓。練習の合間から移動中まで英語漬けの日々を送った。結果は見ての通りである。

 伊藤選手や八村選手は、確かに最初からふつう以上の子だったかもしれない。でも彼らもスゴイ子になるためにマインドを整え、努力をしていたということだ。

 もしあなたの子供が「自分はスゴイ子なんかじゃない、なれない」と思い込んでいるようなら、本書を読ませて、話し合ってみることをおススメする。「しなやか系マインドセット」を持つことと、少しずつでもできる改善と努力は、親と一緒ならきっと続けられるはずだ。

文=古林恭 イラスト=福田とおる