ユーモアミステリー作家・東川篤哉の原点は密室モノ!

小説・エッセイ

更新日:2012/6/20

密室の鍵貸します ― 長編推理小説

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 光文社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:東川篤哉 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

2011年に本屋大賞を受賞し、すっかりメジャー作家の仲間入りをした東川篤哉
その受賞作「謎解きはディナーのあとで」はすっかり社会現象化。櫻井翔・北川景子を配し、高視聴率を記録したドラマ版は記憶に新しいところ。

そんな東川篤哉のデビュー作にあたるのがこの「密室の鍵貸します」。デビュー作であると同時に、”烏賊川市シリーズ”の原点となる記念すべき作品である。

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タイトルだけ見れば、古典的な王道ミステリーの予感がする。いや、コレは決して間違いではなく、ある意味で大正解。ミステリー解説風に言うのであれば、かなり優秀な叙述トリック系の作品であり、流れだけみれば相当の本格派…なのだが。

いやぁ、とにかく爆笑に次ぐ爆笑の連続。
この作品の中では、一晩で殺人事件が2件起こったり、主人公が冤罪に巻き込まれたりしても、緊張感や緊迫感の類を一切感じない。笑点の大喜利、具体的に言えば林家木久扇的なテンポ(?)のギャグがふんだんにちりばめられためられた文章は脱力感満点で、思わず笑みがあふれてしまう。

しかし、その「笑い」の場面に重要な伏線を持ってくる、という、一歩間違うと卑怯と取られかねない戦術が芸術的に上手い。こちらを笑わせている間に何重もの伏線を丁寧に絡め合わせ、最終的には完璧に辻褄の合った状態で物語を終幕させてくる。おかげで全体の雰囲気はユル~いバカ小説なのにもかかわらず、読了時には本格ミステリーを読んだかのような充実感(^^;)があり、不思議にやられた気分になる。なんか悔しい(^^;)。

これまで読んだ東川篤哉作品は殆どがコレと同様のテイスト。デビュー作からしてかなり高いレベルであり、なおかつ強烈な個性をアピールしている。そりゃあ人気も出るよなぁ、と納得せざるを得ない。

前回、「殺意は必ず三度ある」のレビュー時には、「本格ミステリーしか読まない、という人には絶対にオススメしない」と書いたが、ここで撤回。仮にその手の人たちでも、「笑い」を堪えられるコンディションが作れる人なら、チャンレンジして損はないと思います、ええ。


BookLive! の電子書籍は初。iPad用専用アプリのデフォルト画面はシンプルで読みやすい明朝体フォント

設定画面もひと目でわかるシンプル設計、好きな状態に瞬時に設定可能

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