いつか世界を救う(かもしれない)物語!

小説・エッセイ

更新日:2012/6/20

フィッシュストーリー (新潮文庫)

ハード : 発売元 : 新潮社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:Amazon.co.jp/楽天ブックス
著者名:伊坂幸太郎 価格:594円

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「動物園のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュストーリー」「ポテチ」の4篇からなる伊坂幸太郎の短篇集が、このフィッシュストーリー。
“FISH STORY”とは、サカナの物語ではなくて、いわゆる“ホラ話”。
逃がした魚がいつも大きい、釣り人たちの手柄話がその語源だそーな。

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稀代のカリスマである伊坂幸太郎が、とにかくその持ち味をいかんなく発揮しまくった結果がこの作品。ゆったりした流れの中にとんでもないほどの疾走感があり、読了後の清涼感も尋常じゃない。こういう文章の書ける作家はおそらく他にはなく、ピンときてしまった人はかなり根の深い中毒症状に陥ってしまうんじゃないかと。やはり恐るべき作家。

ここに収録された4篇の“ホラ話”、もちろんどれもとんでもない光を放っているのだが、やはり注目はタイトル作の「フィッシュストーリー」。短篇なのにもかかわらず、これでもか! という具合に登場する多種多様なキャラクターたちが見事にリンクしていくさまは、本当に痛快。伊藤淳史・森山未來・濱田岳・多部未華子・大森南朋という豪華すぎるキャストで映画化もされており、そちらも必見の傑作。映画版も鑑賞した上で、原作との微妙なニュアンスの違いを発見し、ニヤリとしてほしい。

コアな伊坂幸太郎フリークであれば、名作「ラッシュライフ」をはじめとする他作品とのリンクも楽しめる。「サクリファイス」で主役を務める黒澤は、ラッシュライフの他に「重力ピエロ」や「砂漠」にも登場する“あの”人。“あの”黒澤を主人公に持ってくるあたり、非常にニクい演出である。

珠玉のホラ話4篇、心して堪能すべし!
だって、「FISH STORY」は、いつか世界を救うんだから。


電子書籍専用の表紙が嬉しい!

「動物園のエンジン」、場面転換をアイコンで表現しているのがカワイイ

人気キャラ、“黒澤”が登場する「サクリファイス」

タイトル作、「フィッシュストーリー」のハイライト、ここからすべては始まった!

書き下ろしの「ポテチ」、野球が好きな人はぜひ!

伊坂幸太郎の文章は横書きでも違和感なし、疾走感が増す感じに
※画面写真はBookLive!のものです