70代になったテリー伊藤氏がまろやかになった理由は「乙女力」!?

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公開日:2020/7/28

老後論 この期に及んでまだ幸せになりたいか?
『老後論 この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(テリー伊藤/竹書房)

 毎週日曜放送の「サンデー・ジャポン」(TBS)を、楽しみにしている人は多いだろう。コメンテーターが10代から70代までと幅広く、番組が拾うトピックスに対する世代間ギャップも楽しめることが魅力のひとつだ。

 しかし新型コロナの影響で、団塊の世代(1947~1949年に生まれた人)を代表するコメンテーターのテリー伊藤氏が、リモート出演になって久しい。と同時に、番組から一気に毒っ気のようなものがなくなったように感じているのは、筆者だけではないだろう。

 1949年12月27日生まれ、現在70歳のテリー伊藤氏は、テレビ番組制作会社のADからキャリアをスタートさせ、その後80年代に総合演出した、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」、「ねるとん紅鯨団」などの番組が大ヒットしたことで注目され、裏方から一躍、タレントやご意見番としても活躍するようになった人物だ。

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 以前は、思ったままに発言する潔さがキャラのひとつだったようだが、近年のテリーさんを見ていると、「かつてのような毒っ気が影を潜めてはいないか?」と、そんな声も聞こえてきそうなのも事実だ。

老後に生きがいをもたらす「老人の中の乙女力」と!?

 さて、70代を迎えた本人の心境やいかに──なのだが、そんな多くの人の関心に応える1冊が、最新著書『老後論 この期に及んでまだ幸せになりたいか?』(テリー伊藤/竹書房)なのである。

 本書は、著者なりの感性を物差しにしながら、著者が理想とする老後の生き方を論ずる内容だ。

 まず冒頭に言及するのは、「老人の中の乙女力」なる感性についてである。

 例えば桜の季節。年老いると「自分はこの季節の花を、あと何回見られるのだろう」とその美しさが胸に染みるようになるという著者。

 これは、人生に限りがあることがよりリアルになり、世の中のことが今まで以上に味わい深く感じられるようになるからで、「これが老いたことで得られる感性だ」と記し、「老いていろいろなものを失ってからも、自分の中に残されて、出現するそんな感性を、“乙女力”と私は呼びたい」と記している。

 特に老人の中の乙女力は、「男性の中に強く現れてくるもの」であり、その理由を著者はこう推測する。

男は年をとると、信じていた肉体的な力や精力なんかが衰えていき、その落差の中でもともと自分が持っていた乙女力に気づく。それを掘り下げて表に出すことで、老後の生きがいを感じることができるんじゃないか。

 いわば、男性の中にもある女性性の部分だ。これまで社会で勝ち残るために優位だった男性性が後退し、変わって女性性が台頭することで、感性がよりセンチメンタルになり、人間的なまろやかさになる。そう考えれば、テレビでの著者の変化にも、どこか納得がいく。

 ちなみに、この「老人の中の乙女力」は、著者が現在通っていると明かす、慶應義塾大学大学院心理学研究課程での、修士論文テーマでもあるそうだ。

 著者はこの乙女力の重要性を、さらにこう語っている。

黒人の苦難の歴史の中でブルースやラップが生まれたように、男が老いを迎えて衰えたときに新たに生まれるものがあると思う。そのひとつが乙女力なのだ。乙女力こそ男にとって最後のモチベーションになる可能性を秘めている。

 一方で女性に対しては、「食べものが美味しい」とか「ドラマが楽しい」といった、目の前のささやかなことに喜びをしっかりと味わえる「オバサン道を極めること」が、老後の充実につながるという。

往年の勢いのある“テリー節”も随所で健在の本書

 また、アンチエイジングしようなどと努力するよりも、「自分の年齢を受け入れながら、格好よくありたい」という著者は、そのための方法として「同世代のライバルをもつこと」を奨励している。

 例えば著者のライバルは、同年齢のハリウッドスター、リチャード・ギアなのだそうだ。ファッションや生き方などから刺激を受けて、よし俺もと、負けないよう意識するという。

 リチャード・ギアと言えば、今年4月に第3子が誕生したことがニュースになった。なお、本書にそのことへの著者のリアクションはない。

 しかし他にも、70歳目前にYouTuberデビューした話題や、「終活」に対して「終活で綺麗にフェイドアウトする人生なんて、魅力を感じない」と一刀両断したり、「孤独死」はある意味当たり前であり、「それまで生きてきた何十年間のほうが大事」など、往年の勢いのある“テリー節”も随所で健在する本書。

 さらには、老人が抱きがちな、仕事環境や若年世代をめぐる嫉妬や怒りをどう克服するかや、著者に影響を与えた芸能人・文化人からの学びなど、いかにも著者らしい老後アドバイスがたくさん学べる内容だ。

 老後世代予備軍はもちろん、老後世代と向き合いたいというすべての方に、ぜひご一読いただきたい1冊である。

文=町田光