なぜ「ホームレス」は路上生活を続けるのか? 生活保護を選ばない超マイペースな生き様

社会

公開日:2020/7/27

『ホームレス消滅』(村田らむ/幻冬舎)

 突然だが、あなたは「ホームレス」に対してどんな印象を抱いているだろうか? おそらく多くの人は、家を失って孤独に生きている人、あるいは少し怖い人だと思っているのではないだろうか。
 
 そんなホームレス像をぶった切る『ホームレス消滅』(村田らむ/幻冬舎)は、彼らのリアルな生き方や価値観に触れることができるルポルタージュ。こういったテーマだと支援することに目が向けられることが多いが、本書はそれよりも彼らの「現在」に重きを置いている。20年もの間、ホームレスと対等な立場で向き合いながら取材し続けてきた著者は、丁寧に、かつ時にコミカルにその生活を記す。

「ホームレス」の一言では片づけられない生き様

 日雇い労働者が集まる町であった大阪・西成や東京の山谷のようなドヤ街は、ホームレスの町でもあった。しかし、移り行く時代の中でドヤ街は変化し、2019年にはあいりん総合センターが閉鎖。こうした変化によってホームレスの居場所は少なくなっており、令和になった今、最後の開かれた居場所は“河川敷”になっているという。

 そんな厳しい状況の中で路上生活を続けるホームレスの暮らし方はさまざま。駅舎や道路で寝泊まりをする人がいる一方で、建築業の経験を生かして鍵付きドアがある小屋を河川敷に建て、畑で作物を育てながら超マイペースに暮らしている人もいる。「ホームレス」という一言で彼らの生き様はまとめられないのだ。

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 炊き出しの利用や拾い食いはしないと決めている人や生活保護を受けるくらいなら死んだほうがいいと口にする人…。彼らも私たちと同じように、それぞれのプライドや信念を持っている。

 だから、ホームレスと社会復帰をただ結びつけようとすることは、根本的な問題の解決にならない。もちろん、障害のある人や生活保護を受けたい人などには適切な支援の手が伸ばされるべきである。貧困ビジネスのような魔の手から、ホームレスを守ることも必要だろう。実際、2004年度から2009年度の間に東京都で試験的に実施された「ホームレス地域生活移行支援事業」は、彼らの社会復帰に高い効果を上げたという。

 だが、中には社会復帰を望まず、「自由に生きたい」と思っている人も多いという。人に迷惑が掛からないよう、それなりに真面目に、それなりに自堕落に生きている人。そう考える人の自由を奪わないことも、もしかしたら支援と同じくらい大切なことなのかもしれない。

“ホームレスでいることは、よいことなのか、悪いことなのか、はっきりいえない。そして、はっきりいうべきだとも思わない。ただなんとなく、徹底的にホームレスを排除しようとする国・社会は、あまり幸せではないような気がするというのが僕の見解だ。ホームレス問題は真面目に、でも寛容に考えていくのがよいと思う”

 ホームレスの中には不法占拠のような法に触れる行為をする人もおり、そうした行動が問題視され、排除運動が行われることもある。だが、環境浄化という名のもとにすべてのホームレスを排除するのは、何か違うと感じる。ベンチの座面を斜めにして横たわることができないようになった「排除アート」を目にすると、可視化できる形で人を排除しようとしている世の中になんだか寂しさを感じてしまう。

 自由な生き方を選んだ人の中には、社会復帰によって得られる「未来」ではなく、「今を好きに生きること」を優先したいという人もいるだろう。だから、一律的なサポート法はすぐ思い浮かばないし、頭の固いことも言いたくない。けれど、ただひとつ、無事で生活してほしいと願う。今年の3月に大学生が起こした岐阜市ホームレス襲撃殺人事件のように、外で生き続けることには危険がつきものであるから、命が守られる対策があればと思う。

 足を使い、時にはホームレスと同じ体験をしながら彼らのプライドや人生観に耳を傾けた著者は、行政の調査だけでは知ることができないリアルな生活を私たちに教えてくれる。ホームレスの歴史も見てとれる本書は、ホームレス史書でもあるのだ。路上で生きる人生、そこにある彼らなりの信念に触れてもらいたい。

文=古川諭香

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