勉強漬けの女子高生が秋田で出会ったのは…!? “8分間の総合芸術”が心を震わす青春マーチングバンド漫画

マンガ

公開日:2020/7/31

みかづきマーチ
『みかづきマーチ』(山田はまち/双葉社)

 仲間と共に何かに我武者羅に打ち込める汗と涙が入り混じった「青春」は、たくさんのことを教えてくれたように思う。例えば、ひとりでは出来ないことも、誰かと一緒なら頑張れる。ライバルの存在が、自分を奮い立たせ、より高みへと導いてくれる――。今よりずいぶん繊細だったあの頃に吸収したことは、大人になった現在でも、自信となり、忘れられない思い出として心に残っている。

『みかづきマーチ』(双葉社)は、そんな「青春」のきらめきを、心ゆくまで堪能できるマンガだ。作者の山田はまち先生は、本作が初連載作品となる。先生の出身地である秋田県を舞台に、マーチングバンドに汗を流す高校生たちの姿が、どこか懐かしさを感じる絵で、躍動感たっぷりに描かれている。

 主人公は、両親に言われるがまま、東京で塾通いの日々を送る高校1年生の美月。物語は、彼女がそんな日常に嫌気が差し、春休みに、秋田で喫茶店を営む豪快で美人な叔母・ユキのもとに家出するところから幕を開ける。口うるさい親もおらず、勉強もない日々は「最高かも」と思ったのも束の間、夢中になれるものがない美月は、早々に退屈する。だがある日、叔母の配達に付きそい地元の千秋高校へ出かけた彼女は、音楽と動く隊列で作られる“8分間の総合芸術”であるマーチングバンドのショーを観て、心が震え、人生が変わる体験をするのだ――。

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 マーチングバンドに感動した美月は、自分もやってみたい思いが高まり、両親の反対を押し切り、東京から秋田の千秋高校へ転校する。そこには、「世界一のチームでマーチングする」夢を叶えるため、マーチング部ではトランペットを担当しつつ、叔母の喫茶店などでアルバイトを掛け持ちしながら、自活の道を模索するアキラという少年もいた。

 美月は、口は悪いが、実力は確かなアキラや、小さくて可愛いのに、ひょいっと12キロのチューバを持ち上げるメグミ、部員の前では決して涙を見せず、気丈に振る舞う部長たちに支えられながら、自らも“金管楽器の花型”であるトランペットを担当することに。

 だが、部長から来月に開催され、全国大会の県予選でもある「秋田マーチングフェスティバル」に新入部員も参加するよう言われ、演奏もマーチングも共に初心者である美月は、焦りと不安で苦しい日々を送ることになるのだが…!?

 マーチングは、演奏を完璧に仕上げるのはもちろん、楽譜を全部暗記して、その上、マーチングのポジションが描かれた動きの設計図“ドリルシート”も覚えなければならない。そもそも演奏しながら動くのも技術がいるし、決められた距離を決められた歩数で歩くのも難題だ。そんな課題をたくさん抱えながらも、美月は決してあきらめることはしない。それはきっと、「ドキドキするものに出会ったら絶対手放しちゃダメ」と、美月のマーチング挑戦を後押しし、「がりっと(※秋田弁で「一生懸命」という意味)頑張りなよー」と笑顔で励まし続けた叔母の存在や、下ばかり向く癖がある美月に、「もっといい景色あるべ」と告げ、弾けるような輝きを放つマーチングのショーを見せたアキラの存在も大きいのだろう。夢中になれるものに出会った美月の多彩な表情が胸に染みるのはもちろん、エネルギッシュな高校生たちの、本当に音が聴こえてくるような大迫力のマーチングショーに胸が高鳴るマンガである。

文=さゆ

1話試し読み

『みかづきマーチ』公式サイト