『未来の年表』の著者が提言! マイホームは必要ない? 「2020」後の超高齢化、人口減少日本で生きる意味とは?

社会

更新日:2020/7/31

「2020」後 新しい日本の話をしよう
『「2020」後 新しい日本の話をしよう』(河合雅司/講談社)

 コロナで世界が激変している2020年。ただでさえ不安だらけの中で追い打ちをかけるようだが、今年は日本がいよいよ「人口減少社会」を本格的に実感させられるスタートの年でもある。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、今年から日本の女性の過半数が「50歳以上」になってしまうのだ(ここからは年々50歳以上の女性が増加し、逆に出産可能な年齢を含む49歳以下の女性たちは減っていく)。

 来年には人口の多い団塊ジュニア世代が50代になり始め、再来年には団塊世代の先頭(1947年生まれ)が75歳になり…この先の日本は毎年、加速度的に超高齢化していく一方だ。当然、介護離職の増大による労働力の減少や、医療費の増大などさまざまな社会問題が山積するのが目に見えている。

 残念ながら、こうした日本社会を根底から揺るがす現実からは誰も逃れることはできない。であれば「どんな未来が来るのか」をきちんと見極め、「どう備えればいいか」と課題として考えることが急務だろう。その意味で新刊『「2020」後 新しい日本の話をしよう』(講談社)は格好のガイドになる一冊だ。いち早く人口減少社会への警鐘を鳴らして累計88万部の大ヒットを記録した『未来の年表』(講談社現代新書)の著者・河合雅司氏が、1991年生まれで旧態然とした老舗企業に勤める独身男性「ミライ君」という架空のキャラクターの素朴な疑問に答える形で、人口減少の諸問題をわかりやすく解き明かして解決のヒントを探っていく。コロナを踏まえた現状から言及しているのも、タイムリーで興味深い。

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 たとえば人口減少社会の中では人手不足が常態化するため「働き方」も大きく変わっていかざるをえない。すでに定年の年齢を引き上げた企業も珍しくないが、これからは「生涯現役」が当たり前になり、「未来の職場では20~30代の若手社員が少ない代わりに50~60代の社員が主力になる」と著者。そんな中では若い世代はひときわ貴重な労働力であり、少ない人数でも労働生産性を上げるためには、満員電車や通勤のマイカーの中に閉じ込めて彼らの時間を浪費したり、長い会議に拘束したりするのは時代遅れになるだろう。今回のコロナでテレワークを導入した企業も多いが、そうした試みは人材を確保するためには欠かせない。さらに介護や育児による離職を減らす上でも、その人の事情にあわせた働き方ができることは有効であり、そうした柔軟性が企業の生命線にもなっていくだろう。

 また「お金」をめぐる状況も大きく変わりそうだ。たとえば資産といえば「マイホーム」を思い浮かべる人も多いが、これからの時代は「高額のローンを組んでまで買うべきか、立ち止まって考える」のが大事だと著者。特にマンションは修繕や建て替えに住民の合意が必要だが、住民の大半が高齢化する中では大規模になればなるほど資金や合意の面で難しくなる可能性がある。さらにいざ手放そうと思っても、次世代の人口が減れば物件の流動性は今より低く、思うように売れないことも考えられる。この先リモートワークが進めば住む場所を変える生き方もアリなわけで、わざわざ「持ち家」を持つ必要はあるのだろうか。未来は資産の考え方も今までとは違ったものになりそうだ。

 著者は、コロナで多くの企業が休業に追い込まれ消費が激減した状況を「人口減少によって国内マーケットが縮んだあとの日本の姿を想起させる」と指摘する。確かに“予行演習”と少しポジティブに捉えれば、以前よりも未来が具体的にイメージできるのはプラスでもある。問題はここからどう豊かさを保ちつつ戦略的に縮むのか――具体的な未来は若者に託すほかないが、本書で世代を超えて課題を共有するのは意味ある一歩に違いない。「日本史において“最大級の激変期”を若者として迎えられる世代がうらやましい」という著者の前向きさに刺激され、未来が少しだけ明るく見えてくるだろう。

文=荒井理恵