アフターコロナの新戦略。巣ごもり消費者に「買いたい!」と思わせる100の販促テクニック

暮らし

公開日:2020/8/2

巣ごもり消費マーケティング
『巣ごもり消費マーケティング ~「家から出ない人」に買ってもらう100の販促ワザ』(竹内謙礼/技術評論社)

 新型コロナの流行が一旦の沈静化をみせ、緊急事態宣言が解除された。7月22日から観光支援策GoToトラベルキャンペーンも開始され、経済が活発になるかに思えたが、東京都では感染者数が連日100人を超え、未だ外出自粛が続いている。すでに限界にきている飲食店や中小企業も多かろう。この先も長いアフターコロナを生き残るにはどうすればよいのか。

『巣ごもり消費マーケティング ~「家から出ない人」に買ってもらう100の販促ワザ』(竹内謙礼/技術評論社)は、経営コンサルタントとして400社以上の企業を支えてきた著者が、自宅から出ない巣ごもり消費者の消費意欲を掘り起こし、コロナ禍からいちはやく脱出するためのビジネスモデルを提案している。

 この先、どのように消費者マインドが変化し、企業や私たちはどのような対応をすべきなのか。本書を参考に考えてみよう。

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 著者は、コロナ禍から社会が脱却していく過程を短期、中期、長期と定義している。緊急事態宣言解除後のゆるやかな自粛期間を短期(1~2ヶ月)、感染者数が安定して消費者が外出するようになる中期(1~2年)、コロナ禍収束後のアフターコロナを長期(数年後)とする。いま現在は短期の期間にあるといえる。著者の予想では、感染者数の増加と減少を繰り返しながら、ゆるやかに収束してインフルエンザのように社会に溶け込んでいくとし、短期、中期、長期それぞれの経営戦略を変えるべきだと訴えている。

 まず短期では、感染リスクを回避した売り場を徹底しながら、来店のハードルが低く、SNS等を活用したコミュニケーションが取れる常連客をターゲットに絞ることだ。短期の企画で有効なのはセール。在庫を特別価格で販売したり、訳あり商品を販売したりして最低限の利益を確保する。根拠として挙げるのは、2011年の東日本大震災の自粛ムードの際に、セール系以外で利益が出た事例がほとんどないという点だ。そして長距離の外出自粛があるからこそ有効なのが、店舗周辺の地元民を狙った地域密着型の販売だ。利益はなくとも事業を継続しているとアピールすることが重要なのだ。

 中期では事業回復のために新規顧客の獲得を目指さなければならない。中期で売りやすいのは、悩みごとを解決してくれる商品やサービスだ。例えば寝具を売る場合、「寝心地がいい」という売り文句では弱いが、「睡眠不足は免疫力の低下につながる」「不安で眠れないときは寝具を替えてみましょう」と少し変えるだけで、不要不急のものが必要早急のものへと付加価値が加わる。その他にも宅配や出張サービス、換気のよい屋外販売、予約制の導入など、感染予防を兼ねたサービスを展開するのも手段だとしている。

 気になるのはコロナ収束後の「長期(数年後)」に入っても、不要不急ものを買わないという消費者マインドが続くことだ。購買意欲を引き出すには、ダイレクトメールやチラシなどの情報発信が欠かせないが、やはり現代で有効なのはメルマガ、LINEなどのネットツールの活用だ。コロナ禍を乗り越えて成長する企業や店舗の必須条件となるのがIT化だという。テレワークやネット販売、ウーバーイーツなどの、新しいリモートスタイルの消費が定着した人々の価値観に対応していくことが、アフターコロナのビジネス戦略のコンセプトなのだという。

 ここまでが著者の語る経営戦略の概要だが、さらに本書では具体的なネット活用法、店舗作り、販促物作り、従業員教育、巣ごもり消費で売れる商品サービスのジャンルなど、実用的で細かなノウハウを含めて掲載している。

 これらの情報は飲食店や企業だけのものではなく、私たち消費者側にとっても安心できる店舗、信頼できる企業を見極める指標になるのではないだろうか。

 誰もが将来への不安を抱く今、社会の全員が協力してコロナ禍からの脱出を目指していきたい。

文=愛咲優詩