婚活の失敗や男尊女卑の職場…「男との付き合い方がわからない」と嘆くすべての女性と男性へ

恋愛・結婚

公開日:2020/8/3

『男との付き合い方がわからない』(水谷緑/大和書房)

 男性からの評価によって自分が生かされている…最近そう思えて苦しい。「かわいいね」「好みだね」という言葉を貰うと、自分のほうが優位に立てたような気がする。だから、「女らしくなくてもいいから愛されたい」と願う自分から目を背け、パンツスタイルや男勝りな中身はすべて封印。いわゆる「好まれやすい女」であるよう努力してきた。
 
 モテ用語の「さしすせそ」も会話に入れ込めるし、相手をそれなりに笑顔にすることもできる。でも、こんな付き合い方は何か違う…。そんな自分の声が日に日に大きくなってきた時に、『男との付き合い方がわからない』(水谷緑/大和書房)を見て、あ、仲間だと思い夢中で手に取った。

男性は私を評価する「王様」? 上からの評価に左右されてしまうと…

 著者の水谷さんは人気作『精神科ナースになったわけ』(イースト・プレス)の作者でもある。男性から向けられる「評価の目線」が気になり始めたきっかけは、小学校6年生の時。体育の授業でチーム分けをした際に、リーダーとなった男子たちから最後までメンバーとして選ばれなかったことで、自分を「ブスでデブでどうしようもない誰が見てもみっともない選ばれない人間」だと思い込んでしまった。

 このままじゃダメ。そう思い、ダイエットをし、おしゃれにも気を使うようになったが、心の中にはいつも「男性への憧れと恐怖」という矛盾した気持ちがあり、彼氏ができても男性からの評価を怖がり、一方で求めもした。そして、虐げられたり、見下したりしているうちに男性との付き合い方が分からなくなってしまったそう。

advertisement

 大学卒業後に就職した会社では周囲の男性から認められるため、男性と同化して仕事をこなそうとするも生きづらさを感じる。婚活ではウケのいい「家庭的で清楚な女性」を演じることに疲弊してしまう。さらに、ストーカー被害や痴漢被害に遭ったこと、幼少期に知らない男性から性器を触られ、「女である自分は男の力の前では無力だ」と感じたことも、水谷さんの「男性像」に大きな影響を及ぼしていた。

 だがある時、精神科の看護師さんに取材をしたことから、水谷さんは「男の生きづらさ」にも興味を持つようになる。男性について知りたいと思い始め、周囲の男性に話を聞くも、男性自身が自らのことを知らなすぎて驚いたそう。

(c)水谷緑

 もしかしたら、世の男性は幼い頃から「男だから」という理由で気持ちを抑圧させられ、女性以上に理想と本来の自分とのギャップに悩んでいるのでは…? そう気づいた水谷さんは、自分たち女性とはまた違った生きづらさを抱えている男性と対等なコミュニケーションをとるには、どうしたらいいのかと考えるようになった。

(c)水谷緑

 自身の結婚生活や夫婦喧嘩についても交えながら語られる「男性との付き合い方」には、学ばされることが多くある。「女性だから」と物事を押し付けられるのと同じくらい、私たち女性も「男性だから…」という理不尽な理由で相手の心を苦しめてはいないだろうかと考えたくなる。私たちはいつしか、目の前にいる相手が男や女である前に、ひとりの人間であることを忘れてしまってはいないだろうか。

 恋愛相談では、よく「好きな人を落とすにはどうすればいいか」「彼女や彼の心をつなぎとめるには?」という悩みが寄せられる。しかし、男女が対等な関係で繋がり合うには、そうやってどちらかが上から相手を見るのではなく、横同士で結ばれる関係を築くことが大切なように思う。「相手をものにできる優越感」ではなく、「お互いを知り合える楽しさ」に、私たちはもっと目を向けていくべきだろう。

 そう気づいたら、これからは「あの男性に好かれるには?」ではなく、「あの人は何が好きなんだろう」という純粋な興味を大切にしていきたいと思った。それは私が女としての自分を楽しむことだけでなく、彼が男としての自分を誇れる理由にもなるはずだ。

 性別を呪縛ではなく、自分を好きになるための材料にすることができたら、私たちはもっと「男性でないこと」「女性でないこと」にもわくわくできる。

文=古川諭香

【こちらも読みたい】
▶夫が、妻が浮気? 隠し事をしている相手に今すぐ試したい! 元刑事が教える聞き出し術