あなたの周りの「怒っている人」への対処法。自粛警察やSNSの誹謗中傷はなぜ生まれる?

暮らし

公開日:2020/8/4

『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(安藤俊介/飛鳥新社)

 みんなが他人の言動に対して過敏になっている…近ごろ、そう思って悲しくなることが多い。未曾有のウイルスは私たちの体だけでなく、心の健康も蝕んでいる。自粛警察やSNSでの誹謗中傷など、いま全国各地では怒りのパンデミックが発生しているようだ。
 
 そんな風潮にあるいまだからこそ、手に取ってほしいのが『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(安藤俊介/飛鳥新社)。本書では一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事でもある著者が、怒りの発生メカニズムを解説。自身のもとに届いた事例の中から、私たちが遭遇しやすいものをピックアップして怒りと上手く付き合うための対処法を紹介している。

「あおり運転」の被害者にも加害者にもならないためには?

 怒りは誰しもが持っている自然な感情。だが、向け方を誤ると他人の人生を壊してしまい、溜め込みすぎると自分自身が壊れてしまうこともある感情だ。

 どうしたら怒りを減らすことができるのだろう…。そう考えた時に参考になるのが安藤氏の提示する「怒りの方程式」。

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“怒り = ①「~すべき」が裏切られる × ②マイナス感情・状態”

 ①と②の積が「怒り」だとすると、怒りを減らすにはどちらかをゼロにするか、できるだけ小さくすることが重要になる。そのために有効なのが、「アンガーマネジメント」だ。

 例えば、社会問題となったあおり運転の場合、怒りの理由は、車内という匿名の守られた空間で気が大きくなることや、「車の価格や運転技術=自分の価値」だと思ってしまうところにあるようだ。だから、その考えが覆されると自身がバカにされているように感じ、怒りの導火線に火がついてしまうのだとか。

 こうした理由を踏まえた上で、安藤さんはあおり運転の被害者と加害者のどちらにもならないために「追い越し車線をゆっくり走らない」「絶対に車から降りない」「相手が見えなくなるまでやりすごす」など、9つのアドバイスを送る。

 また、イライラした時の自分にかける言葉を普段から用意しておく、車内に家族など大切な人の写真を置く、なども効果的だそう。ハンドルを握ると性格が変わってしまうという人はぜひこれを参考に、怒りの炎を大きくしない自己解決法を見つけてみてほしい。

「できない自分」に怒りを感じてしまったら?

 怒りと一口に言っても、理由や矛先はさまざま。時には他者ではなく、自分自身のふがいなさに対して怒りが湧き、苦しくなってしまうこともあるだろう。本書には、そんな怒りを感じた時に自分を包み込んであげられるような、やさしい対処法も記されている。

 例えば、真面目で完璧主義の人は理想の自己像と現実のギャップが許せず、辛くなってしまうことも多い。そうした時に大切なのは、自分を責めず、できない自分を許し受け入れること。自分を批判すると余計にやる気がなくなり、さらにできなくなる…という悪循環に陥ってしまうので、「失敗があるから成功がある」と理解することが大切だ。

 自分を癒す際は、心理学のセルフコンパッション(自己への慈しみ)の概念を参考にしてみよう。

(1)自分に対する優しさ
(2)誰もが失敗するという共通の認識
(3)マインドフルネス(負の感情に気づき受け入れる)

「怒り」という感情との向き合い方を教えてくれる本書は、心の重荷を減らしてくれる“自己救済本”でもある。

 なお、書中には何かと話題の「自粛警察」や「ネット中傷」などの背景にある怒りの理由や対処法も紹介されており、自分の怒りのクセを知ることができるチェックリストも収録。ウイズコロナの世界で意識したい「新しい時代のアンガーマネジメント」も理解できるようになっている。

 怒りは敵にも味方にもなる、強い感情。だからこそ、自己成長につなげられるよう「味方」にして、今よりももっと心豊かな人生を手に入れていこう。

文=古川諭香

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