いま、人類は6回目の大量絶滅に直面している?『フォッサマグナ』の著者が最新作で明かしたこととは?

スポーツ・科学

公開日:2020/8/12

見えない絶景 深海底巨大地形
『見えない絶景 深海底巨大地形』(藤岡換太郎/講談社)

 1963年から刊行が始まった「科学をあなたのポケットに」がキャッチフレーズの科学系新書「ブルーバックス」(講談社)。難しく考えがちな科学に関する様々な疑問を、当代一の識者が科学的根拠に基づいた学説や調査結果などをもとにわかりやすく解説、高度な専門知識がなくても楽しく読んで理解を深められる。

 そのシリーズ最新刊が、2018年に同じブルーバックスから出版されベストセラーとなった『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』の著者で、地球科学を専門とする藤岡換太郎先生による『見えない絶景 深海底巨大地形』だ。深度6500mまで潜ることができる潜水調査船「しんかい6500」に51回も乗船し、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋初潜航をされた海底地質学のスペシャリストである藤岡先生が、海の中の地形がどうなっているのかを解説してくれる一冊だ。

 本書の内容をご紹介する前に、地球の構造について簡単に説明しておこう。地球の一番中心には「核(内核、外核)」があり、その周りでは「マントル(下部マントル、上部マントル)」が対流していて、その上に「地殻」がある。上部マントルの地殻に近い部分が硬い板状の岩盤=プレートになっており、これがマントルの上に乗って少しずつ動いているのだ。地球の表面には十数枚のプレートがあるのだが、日本は太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートの4つが複雑に入り組んだ、世界でも稀な場所にある。

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『見えない絶景 深海底巨大地形』では、人類が未だ到達できていない深海の底まで潜航が可能で、さらには地上の山脈をも飛び越えることができる空想の乗り物「ヴァーチャル・ブルー」に藤岡先生と一緒に乗り込み、岩手県の宮古港からひたすら東へ向かって地球を探検する旅に出るところから始まる。

 行く手にはプレートを生み出している海底山脈の「海嶺」や「海膨」、海嶺に直交する超巨大断層「断裂帯」、プレートが沈み込む、深さ1万メートルを超す場所もある「海溝」、陸上では考えられないほどの巨大な「海台」や「深海大平原」などが出現する。旅は太平洋~南米大陸~大西洋~アフリカ大陸~インド洋と巡って宮古港へ戻ってくる。続けて第2章では海底の巨大地形がさらに深堀り解説される。

 第3章「プレートテクトニクスのはじまり」では、なぜ地球上にプレートが生まれたのかを「想像地質学」を駆使して仮説を提唱し、続けて第4章「冥王代の物語」では40億年以上前の地球が生まれたばかりの時代を振り返り、「地球」という星の成り立ちが解説される。終章「深海底と宇宙」では藤岡先生が深海と宇宙がつながる大胆な仮説を披露、地球上で過去5度もあった大量絶滅の6回目を回避することが人類が直面している課題の一つだと記している。

 2011年の東日本大震災は、北米プレートの下へ太平洋プレートが沈み込んでいく日本海溝でマグニチュード9.0という超巨大地震と津波が発生した。2013年には小笠原諸島の西之島のすぐそばで激しい噴火が始まって陸地が拡大、西之島と一体化し今も活発な火山活動が続く。また近年では南海トラフ地震の発生可能性が高まるなど、海の底で起こる活動はいっときも休まることがない。陸上で生活する私たちにも大きな影響を及ぼす、普段は見ることができない深海の様子を本書でじっくりと味わってほしい。

文=成田全(ナリタタモツ)