犯罪者が犯行に及びやすい「3つの条件」とは? 我が子を犯罪者から守るために知っておきたいこと

社会

更新日:2020/8/17

悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門
『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門(SBビジュアル新書)』(桐生正幸/SBクリエイティブ)

 子どもを狙った犯罪が絶えない。親は、子どもの帰りがすこし遅くなっただけで、不安を感じてしまう。テレビでは、コメンテーターが「(犯罪者は)何を考えているかわからない」「常軌を逸している」とコメントするが、そのような人間は言動が予想できないため、対策が難しい。「犯罪者の心理など知りたくもない」という人が大半かもしれないが、もしその心理の傾向やメカニズムがわかれば、親は子どもを守るための対策が立てやすくなるかもしれない。

『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門(SBビジュアル新書)』(桐生正幸/SBクリエイティブ)を開いてみた。本書によると、世の中が不安な状態になると、人は自己保身の度合いが高まり、不安の原因を誰かのせいにしたり身勝手になったりしがちだ。本書には、ある救急病院の売店で売られていた菓子パンに針が混入された事件が例として挙げられている。この事件の犯人は、ホームレスの中年女性。その病院でずっと寝泊まりしていたところを追い出されたことに逆恨みしての犯行だ。捕まった中年女性の言い訳としては「追い出したほうが悪い。それに、世の中にはもっと悪いヤツが大勢いる。それに比べたら、私の行為は悪くない」というものだ。自動車を運転していて速度違反で捕まったときの、「そんなにゆっくり走っていられない。他に、もっととばしているヤツがいる」という言い訳に近いだろうか。

 本書によると、意外にも、この手の言い訳は犯罪者に多い。近年、インターネット上で特定の個人に嫌がらせをするネットストーカー(サイバーストーカー)が増えてきているが、ストーカーの大半もやはり「相手が自分を特別と認めてくれない」「無視された」などと思い込み、「だから自分は悪くない」と自己正当化する。

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 身勝手な犯罪者たちだが、意外にも犯行に及ぶ際は、合理的に判断する。「獲得する利益」と「得る不利益、必要となるコスト」を天秤にかけるのだ。自身の中で予想される利益がリスクを上回るとき、冷静に犯行を決断する。例えば、ネット上で子どもを狙う犯罪者は、リスクを下げるため、事前に「(親には)自分たちの関係は秘密に」と持ち掛けたり、頼みごとを引き受ける、プレゼントをあげるといった約束で不信感を払拭しようとしたり、複数のプラットフォームやサービスから連絡をとって足がつきにくいようにしたりと画策する。

 犯罪者の姿がおぼろげに見えてはきたものの、では親としてはどのような対策がとれるのだろうか。本書によると、犯罪者は3つの条件が揃ったときに犯行に及びやすい。その条件とは
(1)動機づけられた犯罪者
(2)有能な監視者の欠如
(3)適当な標的
だ。犯罪者にとって欲しいゲームソフトが店にあり(1)、店員の死角になっている売り場にそれがあり(3)、店員が気付いていなければ(2)、犯罪者はゲームソフトを盗む可能性がある。(1)(2)(3)の中で、親ができることは(2)と(3)だろう。例えば、子どもがネット犯罪にあわないためには、親が子どもの状況を常に把握するよう努め、不審者に親の存在を示しておく。子どもに物理的・心理的死角をつくらせないように、日頃から防犯について親子で話し合っておくのも良いかもしれない。

「割れ窓理論」は犯罪心理学で有名だ。窓ガラスが割れたまま放置しておくと、その建物は管理されていないとみなされて、他の窓も割られてしまう、という理論だ。日本は人口減少によって、これから空き家が増えていくといわれる。大人が地域を歩き回り、ガラスが割られないように努めることも、わが子を守る一助になりそうだ。

 まさに今、世の中は非常に不安な状態にある。親一人ひとりが犯罪者を知り、犯罪に備えることが重要だ。

文=ルートつつみ(https://twitter.com/root223