誰も信じちゃダメ…夫の不倫相手は友人だった。裏切りの連鎖が止まらない『ギルティ』

マンガ

公開日:2020/8/18

ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~
『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』(丘上あい/講談社)

 全員裏切り者の、ジェットコースター・ラブサスペンス……。そんな煽り文句が躍る『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』(丘上あい/講談社)は人気がとどまるところを知らない、ドロきゅんラブストーリー。電子コミック専門サイト「まんが王国」内のランキングでは、なんと8ヶ月連続1位を記録。今期には、新川優愛さん主演でドラマ化もされ、8月12日には原作コミックス最新7巻が発売される。

 本作が、これほどまでに読者や視聴者を魅力する理由…それは、登場人物たちのずるい一面に、自分が重なりもするからだ。

登場人物は全員裏切り者…誰も信じてはいけないドロきゅんストーリー

 女性ファッション誌の編集部に勤める爽(さやか)は、結婚して10年になる夫・一真とふたり暮らし。爽は優しくて完璧な夫に、子どもが欲しいという本心を打ち明けられずにいた。

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 そんなモヤモヤを聞いてくれたのが、年下の友人・瑠衣。瑠衣の後押しを受け、爽は勇気を振り絞って夫に子どもを望んでいることを伝えたが、「恋人のような夫婦でいたいから」と断られてしまう。ショックを受けた爽は自分たちらしい夫婦の形を模索していこうとしたものの、一真の行動から他の女性の影を感じ取る。

 そんな時、爽は偶然、最愛の元カレ・秋山と再会。妻子持ちの秋山を前にし、爽の心は揺れる。夫がしているであろう体の浮気と、私の心の浮気はどちらが悪いのだろう…。そう考えていた時知ってしまうのが、一真の不倫相手が瑠衣であるという衝撃の事実。しかも、一真は前妻・弥生との間に子どもをもうけていたのだ。信じていた人たちに裏切られた爽は秋山に救われながら、離婚という道を選ぶ。

 しかし、瑠衣の本当の目的は一真と爽を離婚させることではなく、もっと根深いところにあった。実は、瑠衣は秋山の義妹。瑠衣にとっても秋山は心の支えで最愛の人だったため、秋山の中で特別な存在であった爽を貶めようとしていたのだ。そのための手駒にしたのが、一真の前妻の弟・東睦月。睦月は「寺嶋」と名乗り、爽の職場に潜り込み、爽の地位を貶めた後に姉の弥生を自殺に追いやった一真へも復讐を果たそうとする。そして、瑠衣の歪んだ愛情は次第に暴走しはじめ、ついには秋山の妻子まで標的にされてしまう…。

絶対的悪女である瑠衣の「過去」が明らかに

 最新7巻では、ついに秋山の妻・美和子と瑠衣の繋がりが明らかに。瑠衣の卑怯なアイデアを鵜呑みにし、子どもという既成事実を作ることで秋山と結婚した美和子は、その罪悪感から息子を使って万引きを繰り返していた。今まで知らなかった妻の本性を知り、秋山は絶句する。

 一方、爽は一真から、弥生の自殺には瑠衣が絡んでいたことを聞かされ、衝撃を受ける。実は瑠衣が一真と爽の結婚を弥生に知らせ、心を壊していたのだ。そんな事実をひょんなことから気づいた寺嶋は、秋山の前で瑠衣に復讐を果たそうとする――。

 どうして瑠衣は、こんなにも爽を憎むのか―。「義兄への愛」という理由だけでは説明がつかないほど深い憎悪を目の当たりにし、そう思ってきた読者はきっと多いだろう。その理由が、ついに明かされる。蛇のように絡みつく恨みの根底にあったものは、あまりにも悲しい過去だった…。

 私たちは年を重ねるほど見たくないものに蓋をし、嘘をつき、やり過ごすのが上手くなっていく。でも、片目を塞ぎ、自分に都合のいい事実ばかりを見ながら生きてきた登場人物たちが過去を回想する様を見ていると、自分に問いたくなる。私も現実から逃げてはいないだろうかと。分かったフリや理解ある私を演じるのは、もうやめよう。そんな吹っ切りも得られる本作は、自分の足で立ち続けたいと願う人間の強さと、誰かに頼らなければ生きていけない弱さの両方を包み隠さず描いているからこそ、多くの読者が魅了されるのかもしれない。

 自分でも知らない、本当の私。それを見つけるカギは爽や一真、秋山、瑠衣の中にある。大注目の炎上系ラブストーリーから、あなたも「自分の本音」を見つけるはずだ。

文=古川諭香