【ネコ画像あり】猫の金言に耳を傾けよ! 及川眠子×沖昌之による優しいけどシビアな猫視点の写真集

文芸・カルチャー

公開日:2020/8/22

猫から目線
『猫から目線』(及川眠子:詩、沖昌之:写真/KKベストセラーズ)

 猫を見ていると、呑気でいいなと思う。暖かいところと涼しいところを知っていて、好きな時に寝て、腹が減ったらエサを催促し、気が向いたらすり寄ってきて、せっかく買った猫ハウスには入らずに梱包用の段ボール箱でくつろぎ、いないなと思って探すとびっくりするところへ入り込んでいたりする。

猫から目線

 しかしさんざん探し回って見つけ、抱き上げた瞬間に凄みのある顔でこんなことを言われたら「はい、すみませんでした!」と謝ってしまいそうだ。猫だって、生きていくのは大変なのだ。

 本書『猫から目線』(KKベストセラーズ)は写真集『必死すぎるネコ』『ぶさにゃん』などで知られる猫写真家の沖昌之さんの写真に、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の「残酷な天使のテーゼ」や「魂のルフラン」、Wink「淋しい熱帯魚」、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』の「Fighting Gold」などを手掛けた作詞家の及川眠子さんによる全45篇の詩が載っている。

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猫から目線

猫から目線

 詩は優しくもシビアな猫視点からの、世界の真理を突く言葉だ。

猫から目線

猫から目線

 毎日あくせくと働くばかりで心に余裕がなく、自己顕示欲を満たそうと偽善的な行動をして誰かを傷つけ、ネット上には悪意が日々溢れ、すぐに忘れ去られてしまうニュースが次々と流れてくる……しかし猫の姿と言葉を噛みしめると、私たちは凄まじい勢いで走る乗り物から振り落とされたら一巻の終わりなのではないかという強迫観念に満ちた、異常な世界に生きていることに気づく。そこから少しだけ距離を置くことができれば、猫のように自由に生きていけるのだ。

猫から目線

猫から目線

 猫といえば、夏目漱石の『吾輩は猫である』で、主人公である猫の“吾輩”がこんなことを言っている。

元来人間というものは自己の力量に慢じてみんな増長している。少し人間より強いものが出て来て窘(いじ)めてやらなくてはこの先どこまで増長するか分らない。(夏目漱石『吾輩は猫である』)

 人間などというものは、昔からまったく変わっていないのだ。だから賢い猫たちの言葉に、人間たちはもっともっと耳を傾けるべきなのである。

猫から目線

 また本書のプロモーションの一環として、『幽☆遊☆白書』蔵馬役や『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ役を演じた、声優の緒方恵美さんによる詩の朗読も公開中だ。猫のキャラクターと詩の内容によって変わる、緒方さんの変幻自在な声も楽しんでほしい。

https://www.youtube.com/channel/UCLE3OvlNYu_xv_Y1dN1DYNQ

文=成田全(ナリタタモツ)