日本からサケが消滅する!? 温暖化が引き起こす日本の海の驚愕の事態とは

暮らし

公開日:2020/8/24

温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系
『温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系』(山本智之/講談社)

 天候や気象についての“観測史上初” “数十年に一度” “記録的”といった言い回しはいつの間にか聞き慣れたものになり、そんな言葉で形容される猛暑や暖冬、台風やゲリラ豪雨もまた毎年のように発生するようになってしまった。

 こうした極端な気象の増加の原因は、二酸化炭素など温室効果ガスの排出がもたらす地球温暖化の影響が大きい。温暖化は異常気象だけでなく、継続的な海面上昇も引き起こしており、その深刻さはもはや地球規模だ。

 一方、文字通り目に見えない“水面下”でも着実に温暖化による異変が進行しているという。それは海の中だ。しかも、日本近海は世界平均を上回るペースで温暖化が進んでいるという。サイエンス系新書レーベルとして定評のある講談社ブルーバックスの新刊『温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系』(山本智之)は、その実態に迫り、警鐘を鳴らす一冊だ。

 海が直面している脅威は、温暖化による海水温の上昇、そして大気中の二酸化炭素が海に溶け込むことによる海洋酸性化だ。

 本書によれば、海面から水深100メートルまでの海水温は、今世紀末までに約0.6~約2.0℃上昇すると予測されており、世界の平均海面水温は100年あたり0.55℃のペースで上昇。日本近海の海面水温はこのペースを上回り、2019年までの100年あたりに1.14℃上昇している。

 また、海水は基本的に弱アルカリ性で、世界の海洋の表面海水は現在、平均でpH値8.1となっている。海洋酸性化とは、海水が酸性になるわけではなく、アルカリ性が弱まって中性に近づくことだ。

 気象庁による海洋観測によるとすでに日本近海では海水のpHが低下し続けていることが確認されていて、1990年から2016年にかけて約0.05低下。10年あたりに0.018のペースでpHが下がっているという。こうした数値だけを見ると「なんだかたいしたことなさそうだな」と思われるかもしれない。

 しかし、科学ジャーナリストである著者が、実際に自ら各地で潜水取材を行い、撮影した写真、数々の科学的考証を得たデータ、複数の研究者の知見と共に明らかにしていく実態と未来予測を読めば、決して「たいしたことない」とは思えなくなるだろう。むしろ、私たちの身近な生活に与える影響の大きさに衝撃を受けるはずだ。

 たとえば、本書では海の温暖化や酸性化によって次のような事態が起こりうるとして警告している。

・高い水温が苦手な冷水系の魚であるサケが日本から消える
・乱獲で数が減っているクロマグロがさらに減少
・秋の風物詩サンマは小型化して冬が旬に
・酸性化が殻に与える影響で日本産のアワビやホタテが激減
・今世紀中に日本近海から数種のワカメが消滅

 あえて身近な食卓に関わるところを挙げてみたが、海の変化は日本の食文化も変えてしまう可能性がある。このまま海の温暖化と酸性化が進めば、数十年後には寿司ダネは今とまったく違うものになっているかもしれないのである。

 もちろん、こうした事態は今後必ず起こるわけではない。海の生態系にどのような変化が起き、どうすれば最悪の事態を回避できるのか。そこについても現場の最前線を調査してきた著者が本書に詳しく記しているので、ぜひ実際に読んで確かめてもらいたい。

 最新の研究と現地取材に基づいた科学的なエビデンスのある“未来の海”の姿はとても説得力があり、それだけに危機感も高まるはずだ。日本最大のサンゴ礁域である石西礁湖はすでに7割のサンゴが死滅しているという。“未来の海”への異変は始まっている。多くの日本人が知るべきことが書かれた一冊といえるだろう。

文=橋富政彦

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