まさに巨乳バカ一代! かとうれいこ、細川ふみえ、雛形あきこの育ての親の驚きの半生

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公開日:2020/8/30

新・巨乳バカ一代
『新・巨乳バカ一代』(本橋信宏/河出書房新社)

 かとうれいこ、細川ふみえ、雛形あきこ、山田まりや、小池栄子、佐藤江梨子、MEGUMI……。いずれも90年前後~2000年代初頭にかけて、一世を風靡したグラビアアイドルだ。

 その当時を知る人なら、彼女たちの名前から「イエローキャブに所属していた」という共通項を思い出し、代表を務めた野田義治氏(現・サンズエンタテインメント会長)の顔まで頭に浮かぶだろう。

『新・巨乳バカ一代』(本橋信宏/河出書房新社)は、そんな“巨乳マイスター”と呼ばれた野田義治氏の半生と、芸能界の裏側を描く一冊。著者は『全裸監督』でおなじみの作家・本橋信宏氏だ。

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 本橋氏の著作らしく、本書にはアダルトビデオの帝王・村西とおる氏も登場。村西氏と野田氏の深い交友も明かされる。「キャンペーンガールを何十人も集めたビデオをつくれ」との村西の号令のもと、野田氏が監督・プロデューサーを務め、当時クラリオンガールだった蓮舫らが出演する作品を撮影した……という逸話など、一つ一つのエピソードがとにかく濃厚だ。

 芸能界の裏話を描いた話も強烈。当時イエローキャブに所属していた細川ふみえは、ビートたけしとの関係が噂されていたが、彼がバイク事故を起こしたとき、その入院先に真っ先に駆けつけたのが野田氏だったこと。もともと他の事務所に所属していた雛形あきこに惚れ込んだ野田氏が、その珍しい名字を手がかりに自宅を調べ上げ、スカウトに押しかけたこと……。

 今の時代なら許されなそうなエピソードも複数あるが、野田氏本人の経歴と言動にも驚きの逸話が複数。歌舞伎町のジャズ喫茶でアルバイトをしていた時期、知人のヤクザに連れられて機関銃をぶっ放す襲撃に同行した……という逸話などは戦慄モノだ。

「人さらいが来たかと思った」(雛形あきこ)、「人買いかと思った」(山田まりや)など、自身が育てたタレントからもコワモテぶりをネタにされる野田氏だが、「怖いのはやっぱり見た目だけじゃなかった!」と再確認させられる話もあったりするのだ(※野田氏本人はその筋の人ではなく、特に悪事も働いてません!)。

 一方で、「うちは最初は水着でもだんだん着せていく」という育成戦略など、野田氏がとにかくタレントを大事にする人物であることは本書からも分かる。実際のところ、雛形あきこ、小池栄子、佐藤江梨子ら、野田氏のもとで育ったタレントは、水着グラビア抜きでも引っ張りだことなるような大成を果たした。

 そして、野田氏の「タレント第一」の姿勢は、彼の強みでありつつ弱点でもあった。本書には、「タワマンだって3つ4つ持っていても不思議じゃないのに住んでない。ぜーんぶタレントにつぎ込んで終わっちゃったでしょ」という野田氏を評するコメントも登場した。『新・巨乳バカ一代』は、そんな一途で不器用な野田氏の人柄が伝わる評伝だ。

文=古澤誠一郎