『半沢直樹』を倍楽しむ! 大和田や黒崎との因縁、5億円の債権回収エピソード…顔芸の再現度も高いコミック版!

マンガ

公開日:2020/8/30

半沢直樹
『半沢直樹』(池井戸潤:原作、フジモトシゲキ:漫画、津覇圭一:構成/講談社)

 ドラマ『半沢直樹』の盛り上がりがすごい。なんと、5週連続でTwitterの世界トレンド1位を記録したそうだ。前作で40%超の視聴率を記録したとはいえ、およそ7年ぶりの続編に、これだけの人が熱狂するとは…。実在の企業や業界を題材としたリアルな設定に加え、個性的な役者たちの“大げさ”にも思える演技が話題になっている。

 前作から引き続き登場する大和田常務役の香川照之や、市川猿之助(伊佐山泰二役)、尾上松也(瀬名洋介役)など、歌舞伎役者の存在感が大きい。「今どきこんな会社ないよ(笑)」とツッコミながらも、毎週彼らの大立ち回りに夢中になっている。

コミックも顔芸も期待を裏切らない!

 ここで紹介するのは、マンガ版『半沢直樹』(池井戸潤:原作、フジモトシゲキ:漫画、津覇圭一:構成/講談社)だ。内容は、原作小説よりも、ドラマ版のコミカライズといったほうが正確だろう。なぜなら、マンガに登場するキャラクターたちが、ドラマの俳優にそっくりなのだ(笑)。主役の半沢はややマンガチックにデフォルメされているが、脇を固める面々は、ほぼそのまま本人である。個人的にツボだったのは、大和田常務(香川照之)と浅野支店長(石丸幹二)。怒りや悔しさをあらわにする顔芸は見ものだ。

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 8月20日に発売された第3巻までのストーリーは、西大阪スチールの5億円の債権回収をめぐるエピソード(2013年のドラマでは前半部分、原作小説では第1巻『オレたちバブル入行組』にあたる)。融資課長の半沢は、浅野支店長の命令で西大阪スチールに5億円もの融資を行う。しかし、粉飾決算が明らかになり、まもなく西大阪スチールは倒産。半沢は、粉飾を見抜けなかった責任を押し付けられ、5億の債権を回収するか、出向させられるかの瀬戸際に立たされる…。

黒崎とあそこまで争う理由も解説

 大まかな流れは原作・ドラマと変わらないが、マンガならではの魅力もある。半沢直樹のストーリーは、金融業界の事情が深く関わっているから、ドラマだけだと細かいところまで理解するのがむずかしい。その点、マンガ版は、自分のペースで読めるうえ、元メガバンク支店長・菅井敏之さんのコラムもついている。読んでいて「ほんとなの?」と疑いたくなる銀行の慣習や、国税庁の黒崎とあそこまで争う理由も解説してくれるから、シリーズの世界観をより理解できる。

 怒涛の展開の連続に、毎週見逃せない「半沢直樹」。「もっと作品を味わいたいけれど、原作小説は少しハードルが高い…!」という方は、ぜひマンガ版を読んでみてほしい。今作でも登場する大和田や黒崎との因縁を振り返り、半沢の働く金融業界への理解を深めれば、今の放送をより楽しめるはずである。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7