トイレの花子さんや白装束の集団の目的は!? ゾ~ッとするけど最後はほっこり! “新感覚の怪談アンソロジー”

マンガ

公開日:2020/8/28

みんなから聞いたほっこり怖い話 1 幽霊の道案内
『みんなから聞いたほっこり怖い話 1 幽霊の道案内』(佐東みどり・木滝りま:著、鶴田法男:編、筒井りな:絵/岩崎書店)

 本好きにとって、夏といえばやはり「怪談」が読みたくなる季節。怖い気持ちもあるけれど、好奇心が抑えられずつい読んでしまった…という方もいるのではないでしょうか? そう。怖い話の魅力は何も背筋が凍るような恐怖感を味わえることだけではないのです。時には涙なしでは語れない人間ドラマが描かれることもあれば、何かしら教訓めいたことを伝えてくれることもあります。

 岩崎書店の小学校中学年向き怪談シリーズ『みんなから聞いたほっこり怖い話 1 幽霊の道案内』(佐東みどり・木滝りま:著、鶴田法男:編、筒井りな:絵)は、「3分後にゾ~ッとして5分後に…ほっこり」できる“新感覚の怪談アンソロジー”です。本作は、しあわせをよぶ妖怪・座敷わらしのピラコが、怖くても心があったまる話を全部で7つ、みんなに教えてくれます。

白装束の大きな体をした人たちと出会った小学生の運命は!?

 個人的に一番怖く、インパクトがあったお話は、小学2年生の健太くんが白装束の大きな体をした人たちに出会う物語「幽霊の道案内」です。

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 お母さんと一緒に歩いていたのに、チョウチョを追いかけているうちに、ひとり知らない道に来てしまった健太くん。その時、道路の角から「のっしのっし」と重そうな音が聞こえてきて、不思議に思っていると、白装束の大きな体をした人たちが、のっしのっしと歩いているのが見えたのです…!

 彼らは車にぶつかりそうになった子供を助けたことや、割れたガラスで遊ぼうとした子供を助けたことを話しながら歩き続けます。健太くんは、彼らのことが気になり、後をついて一緒に歩いていきます。ですが、白装束の大きな体をした人たちは、突然立ち止まって、ぐりっと振り向き、健太くんに一斉に忠告をするのですが――!?

 このお話は、住宅街を練り歩く白装束の集団のイラストがとても衝撃的で、大人でもぶるっと震えてしまうほどでした。ですが、彼らの本当の役目を理解した時、恐ろしい外見とは裏腹に、心がぽっとあったかくなる結末が待っています。

トイレの花子さんが転校生にくれたもの

 また、新しい学校に転校してきたものの、なかなかクラスに馴染めない小学3年生の女の子・凛ちゃんが、4階の女子トイレの奥から3番目の個室で“トイレの花子さん”に出会い、肩をガシッとつかまれ「いっしょにあそぼぉおぉ~」と追いかけられるお話「四階のトイレの花子さん」も、ぎょっとしました。

 普段は怖い話が大嫌いな凛ちゃんですが、トイレに花子さんが出るという噂が本当か確かめたくなったばかりに、本当に花子さんに出会ってしまい、腕をつかまれ、襲われそうになってしまうのです――。

 このお話の結末は、とっても意外なもので、これまたほっこりしました。昔から学校にまつわる怪談で超有名人でもある“花子さん”が、ひっこみじあんな凛ちゃんにもたらしたものを、ぜひ確かめてみてくださいね。

 本作は他にも、子供たちがありふれた日常で、いろいろな幽霊や不思議な存在と関わるお話が収録されています。一瞬心の底からゾッとするけれども、びくびく震えながらページをめくっていくと、後には心にぬくもりを感じさせる結末が待っています。

 世の中はきっと、目に見えるものばかりで成り立っているわけではないはず。平凡な日常にも、あやしくて不思議で優しい何かが私たちを見守っていてくれるのかもしれない…と信じたくなるこの夏おススメの1冊です。

文=さゆ