〈4分のHIITで脂肪が燃える〉は誤解? 短時間・高強度運動「タバタトレーニング」がもつ科学的効果

健康・美容

公開日:2020/9/1

「4分で身体は変えられる」の科学 〜なぜ短時間・高強度運動が人気なのか?(扶桑社新書)
『「4分で身体は変えられる」の科学 〜なぜ短時間・高強度運動が人気なのか?(扶桑社新書)』(田畑泉/扶桑社)

 YouTubeで検索すると、ボディメイクや筋トレに関するトレーニング動画が数多くヒットする。これらを運動不足解消に役立てている方も多いだろう。

 今、トレーニング動画の中で特に人気を集めているのが「HIIT(ヒット)」だ。High Intensity Interval Trainingの略で、日本語では高強度運動という意味をもつ。HIITは短時間のうちに数セット、高い強度の運動を行うトレーニング方法で、内容はハードだが、4分程度で取り組める特徴がある。

『「4分で身体は変えられる」の科学 〜なぜ短時間・高強度運動が人気なのか?(扶桑社新書)』(田畑泉/扶桑社)は、HIITプログラムの王道ともいえる「タバタトレーニング」について、科学的に解説した1冊だ。その内容を詳しく見ていこう。

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アスリート向けに開発された「タバタトレーニング」

 タバタトレーニングは、10秒間の休憩を挟みつつ20秒間の強度の高い運動を行い、6〜7セット目で「疲労困憊」に陥るようなトレーニング法だ。強度の高い運動とは、続けて行えば50秒程度で疲労困憊に至る=400mを全力疾走するくらいのかなりハードな内容である。

 そのネーミングから察しがつく通り、タバタトレーニングは日本で生まれたもの。スピードスケートの日本ナショナルチームのヘッドコーチだった入澤孝一氏によって、アスリート向けに考案されたものだ。その後、海外のトレーニングマニアの間で広まり、ここ数年で、逆輸入される形で日本でも知られるようになった。

 タバタトレーニングは運動生理学的エビデンスに基づいており、体力の維持・向上や、生活習慣病の予防において効果的であるという。それについて理解するのに、本書ほど最適な1冊はない。なぜなら、タバタトレーニングは本書の著者で、立命館大学教授の田畑泉氏が1990年代に発表した論文をもとに作成されたものだからである。

タバタトレーニングの習慣化で健康面の向上が期待できる

 タバタトレーニングの魅力を簡単に説明すると、有酸素性エネルギーと無酸素性エネルギーの両方を、いっぺんに効率よく向上させられる点にある。前者はウォーキングや水泳など有酸素運動で生じるエネルギー、後者は筋トレのように自分の体重で筋肉に負荷をかけることで生じるエネルギーのことだ。

 これまでは強度が低い、あるいは中くらいの有酸素運動が「健康にいい」と推奨されてきた。しかし近年の研究ではタバタトレーニングのような短時間の高強度トレーニングのほうが健康効果は高いと分かってきたそうだ。

 たとえば生活習慣病である糖尿病の予防や治療に関連する「GLUT4」というタンパク質は、低・中程度の有酸素運動よりもタバタトレーニングを行ったほうがより短い期間で増加することが明らかになっている。また、本書によるとタバタトレーニングに週3ペースで取り組むと、健康にかかわる糖代謝や持久力が増す作用が持続するという。

 つまり、タバタトレーニングを習慣化することで健康面の向上が見られるのは科学的に明らか、ということである。ただしタバタは数分で疲労困憊に至るような高強度のトレーニングである。下記の引用文にあてはまる人は、あらかじめ医師に相談してから取り組むかどうか決めてほしい。

高強度のトレーニングですので運動中に血圧が、かなり上昇します。〈中略〉また、自体重を用いて行う場合にはかなり大きな負荷が関節にかかる場合があります。したがって血圧の高い方、関節に異常のある方は医師に相談してから行うようにしてください。(p.175)

タバタトレーニングで「脂肪が燃える」「瘦せる」は本当か?

 タバタトレーニングが健康にいい、ということは分かった。では「ダイエット」にはどうだろう。

 海外のフィットネス情報誌では、しばしば「fat burning(脂肪燃焼)」という文字とともにタバタトレーニングが紹介されるらしい。しかし残念ながら、これは〈誤解〉であるという。

そもそもタバタトレーニングは短時間で済むものなので、脂肪はそれほど燃焼しません。そのため、「タバタトレーニングで脂肪が減った」というエビデンスはないというのが現実です。(pp.34〜35)

 習慣的にタバタに取り組むことで、結果的に体重が減る人は確かにいる。しかし短時間のトレーニングでは、脂肪が燃えだすことはないらしい。YouTubeで動画を見たり、インターネットでトレーニング方法を調べたりする時は「短時間で脂肪燃焼」といった甘い言葉には気をつけたい。

 最後に、タバタトレーニングを行う方法であるが、6〜7セット目で疲労困憊に陥るような強度の高い運動であれば、基本的に動きは自由だ。器具を使うパターンもある。また、正確にはタバタに適した動きというものがあり、本書でも写真付きで紹介している。

 タバタトレーニングは、確実にキツイ。しかしその健康効果は科学的に保証されているといっていい。何より、短時間・自宅で行えるのが魅力的だ。家に引きこもって過ごし運動不足に陥りやすい今こそ、タバタトレーニングを習慣化させてみてはどうだろう。

文=ひがしあや