BOOK OF THE YEAR 2020投票スタート! まずは2019年小説部門を振り返る!半沢直樹じゃない、もうひとつの池井戸潤作品

文芸・カルチャー

公開日:2020/9/4

ノーサイド・ゲーム
『ノーサイド・ゲーム』(池井戸潤/ダイヤモンド社)

『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。今年の投票期間がいよいよスタート! ぜひあなたの「今年、いちばん良かった本」を決めて投票してみてほしい。

 ここで改めて2019年にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。

 2019年の首位に輝いたのは池井戸潤の『ノーサイド・ゲーム』。左遷されたエリート社員が、成績が低迷するラグビー部の改革に乗り出す物語が、働く大人の圧倒的な支持を得た。大泉洋主演でのドラマ化や、ラグビーW杯で日本代表がベスト8入りを果たした快挙も追い風となったが、やはり決め手は作家と作品の質への信頼感。「池井戸潤は裏切らない」、そんな熱い声が2018年から2年連続の首位に押し上げた。

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小説 天気の子
『小説 天気の子』(新海誠/KADOKAWA)

 2位は新海誠の『小説 天気の子』。観客動員1000万人超を記録したヒット作を、監督自らがノベライズ。映像では表現しきれなかった心理描写を盛り込むことで、鑑賞後の補完テキストとして若年層の心を掴んだ。

沈黙のパレード
『沈黙のパレード』(東野圭吾/文藝春秋)

 3位は『沈黙のパレード』。東野圭吾の「探偵ガリレオ」シリーズ最新作だ。真相が二転三転する復讐劇は一気読み必至。同シリーズの人気作『容疑者Xの献身』も併せて再読したくなる。

いけない
『いけない』(道尾秀介/文藝春秋)
クジラアタマの王様
『クジラアタマの王様』(伊坂幸太郎/NHK出版)

 上位作品には、小説の可能性を広げる新鮮なギミックも見られた。5位『いけない』、19位『クジラアタマの王様』など、写真やコミックを小説の一部として組み込んだ作品もランクイン。ベテラン作家の創意工夫に引き込まれる。

シーソーモンスター
『シーソーモンスター』(伊坂幸太郎/中央公論新社)
死にがいを求めて生きているの
『死にがいを求めて生きているの』(朝井リョウ/中央公論新社)

 作家個人の枠を越えた、チーム戦としての試みも話題に。伊坂幸太郎が発案した中央公論新社「螺旋」プロジェクトは、古代から未来までの日本を舞台に8作家が競作。同企画からは同19位『シーソーモンスター』、22位『死にがいを求めて生きているの』の2作がランクインした。

平成くん、さようなら
『平成くん、さようなら』(古市憲寿/文藝春秋)
Blue
『Blue』(葉真中顕/光文社)

 18位『平成くん、さようなら』、34位『Blue』のように、平成という時代を俯瞰して見る作品が入っていたのも2019年ならではの特色だ。

三体
『三体』(劉慈欣/早川書房)

 異彩を放ったのは25位『三体』。世界各国で19言語に翻訳されたSF超大作だが、日本でもジャンルの垣根を越えてブームを巻き起こした。なお2020年6月には続編『三体II 黒暗森林』が刊行された。

線は、僕を描く
『線は、僕を描く』(砥上裕將/講談社)

 26位『線は、僕を描く』は水墨画×青春エンタメというこれまでにない切り口が瑞々しい新人作家のデビュー作。今後の活躍に期待大だ。

救いの森
『救いの森』(小林由香/角川春樹事務所)
さよならの儀式
『さよならの儀式』(宮部みゆき/河出書房新社)
つみびと
『つみびと』(山田詠美/中央公論新社)
検事の信義
『検事の信義』(柚月裕子/KADOKAWA)

 42位『救いの森』、44位『さよならの儀式』、48位『つみびと』同48位『検事の信義』のように、児童虐待や貧困などの社会問題に目を向け、弱者の声を真摯に掬い上げる物語も支持を得た。

文=阿部花恵