働かずに奢ってもらって生きる“プロ奢ラレヤー”。家まで手に入れた彼が語る「あきらめ戦略」とは?

社会

公開日:2020/9/7

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略 お金に困らず、ラクに、豊かに生きるには』(プロ奢ラレヤー/祥伝社)

 ツイッターで話題の「プロ奢ラレヤー」なるアカウントをご存じだろうか? その名の通り“奢られる”プロで、誰かに奢ってもらうことで日々暮らしている。ご飯代はもちろんのこと、家も誰かに泊めてもらうという。ついには、フォロワーから家自体もプレゼントされたとか。
 
 企業に勤め、粛々と働いている身からすれば衝撃的な話である。いったい、なぜ彼は“奢られる”だけで生きていけるのか。『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略 お金に困らず、ラクに、豊かに生きるには』(プロ奢ラレヤー/祥伝社)を読めば、その秘密が明らかになる。本書を読んだからといって、誰もが次の日に会社を辞めて生活できるわけではない。だが、彼の生き様・考え方を知ることは、私たちが幸せに生きるためのヒントになるはずだ。

なぜ奢ってもらって生活できるのか?

 まずは、誰もが気になる「奢られ」の秘密を紹介したい。(世間一般で言うところの)労働をしていない彼は、いかにして家を手に入れたのか。ポイントは、“価値の交換”だ。“奢られる”ということは、それに足る何かを与えているのである。

 ちょっと想像してみよう。私たちの生活で「奢り」が発生するのはどんなときだろうか。たとえば、会社の後輩と飲みに行くとき。気になる女性と食事に行くとき。気持ちよく奢れるのは、相手から見えない何か(=話に付き合ってくれる、自分に時間を割いてくれている、など)を受け取っているからだろう。つまり、「プロ奢ラレヤー」は、人から、「奢ってでも、話してみたい!」と思わせる存在なのである。だって、奢られて生きている人なんて、きっと話もおもしろいに決まっている。

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「あきらめる」ことで幸せをつかむ

「プロ奢ラレヤー」は一夜にして生まれたわけではない。どのようにして、今のような生活をするに至ったのか。本書によれば、まず「労働をあきらめた」のだという。「働いて食う焼肉より、働かずに食う雑草だ!」と考え、ごみ箱から拾ったハンバーガーを拾ったり、友達に奢られたりする生活が始まった。そんな彼に会いたがるフォロワーも多く、オフ会をしながらご飯を奢られるようになったというわけである。

 本書のテーマは、「あきらめる」である。私たちの日々の苦しみは、「あきらめられない」ことから生まれているのかもしれない。たとえば、私たちが毎日働いている理由。その仕事を通じて実現したいこともあるだろうが、それだけではないだろう。お金が欲しい。世間体を良くしたい。異性にモテたい…働く裏にはいろいろな欲求が隠れている。すべてを満たそうとすると、気づけば自分が精神的・肉体的に追い詰められてしまったりする。私たちは、自分の欲求に押しつぶされてしまうのだ。

 著者は、まず自分がなんとなく欲しいと思っているものを100個あげてみよ、と語る。そして、そのうち99個をあきらめてみる。残ったひとつを守るだけなら、たとえ凡人でもできるはずだというのだ。それが家族なのか、仕事なのか、時間なのか…それはなんでもいい。何もかもを取ろうとするのではなく、自分のつかめる幸せを見つけよう。

 本書では、「あきらめる」ための具体的な手段も紹介している。「親」や「結婚」だってあきらめられるし、社員でなくバイトを選んでもいい。いろいろな欲求に囚われてがんじがらめになっている…と感じる人は、ぜひ「プロ奢ラレヤー」の生き様を覗いてみてほしい。どうしてもあきらめられない「何か」に気づくことができれば、人生がもう少し楽になるはずだ。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7