ペットが死んだら「また飼えばいーじゃん」…相手の気持ちが考えられない子にはどういう対応が必要?

出産・子育て

公開日:2020/9/10

『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(宮口幸治/扶桑社)

 すぐに諦めてしまう、感情の表現が苦手、善悪の判断が難しい――。
 
 そうした困りごとや悩みを抱える子どもたちの一部には、「境界知能」や「グレーゾーン」と呼ばれる層が存在している。「知的障害」には含まれないものの一定の支援が必要、もしくは発達障害の傾向がある子どもたちは、35人のクラスでは約5名の割合でいるといわれている。
 
『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(宮口幸治/扶桑社)は、困っている子どもたちが発するサインに目を向け、その背景や原因、そして支援の方法を紹介する1冊。ほぼ全編がマンガなので、理解しやすい。
 
 50万部超の大ベストセラーとなった宮口さんの著作『ケーキの切れない非行少年たち』では、多くの非行少年たちに「境界知能」の子どもたちが一部存在する実態を描き出したが、本書『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』で描いたのは、彼・彼女らが非行に走る前に必要な“早期支援”だ。

断れなかっただけなのに「やさしいね」といわれてしまう

 友達同士の会話についていけず仲間はずれになるのを恐れている子どもは、嫌なことを断れない場合がある。「やさしいね」といわれ、「友達のいうことを聞くのが正しいんだ」と学習してしまったり、友達から気に入られるために悪いことにも手を染めてしまったりする可能性もある。

 こういった子どもには、ある問題が起こったときに適切に対処できるよう、前もって役を演じて練習しておく“ロールプレイ”などが有効だという。

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犬が死んだら「ペットショップでまた買えばいーじゃん」?

 大切なペットの犬が死んで泣いている友達に対して「ペットショップでまた買えばいーじゃん」といってしまう子がいたら…大人はどのように接するのがよいだろうか?

「相手の気持ちを考える」のは難しい。相手の置かれた状況や背景を想像して気持ちを理解することが難しいという場合、その前の段階で、相手の表情に注意を向けたり、読み取ったりすることにつまずいているケースもある。

 そうした子どもに対しては、表情写真を見て練習したり、「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」などの専門的な支援トレーニングをしたりする対応が可能だ。

忘れものが多いときには?

 忘れものが多い子どもに厳しく注意しても、忘れものが減るとは限らない。もしかすると、ADHDの特性を持っている子どもかもしれない。

 こまめに「1日1個これだけは必ず持ってこよう」とわかりやすく示したり、持ちものを書いて玄関に貼っておき、チェックする習慣をつけることは有効だろう。

“境界知能やグレーゾーンの子は普通に話したり遊んだりする分にはほとんど見分けがつかない”

 著者の宮口さんはこう指摘する。彼・彼女らのサインを見逃さないためのヒントが詰まった1冊を、ぜひ手にとってほしい。

文=えんどーこーた

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