『ドラえもん』の人間関係は現代社会の縮図!? 有名すぎるマンガの裏テーマに迫る

マンガ

公開日:2020/9/12

読解!「ドラえもん」講座
『読解!「ドラえもん」講座』(中川右介/イースト・プレス)

 2020年に誕生から50周年を迎えた国民的キャラクター『ドラえもん』。言うまでもないが、ストーリーは何をしてもダメダメな主人公・野比のび太の前に未来のネコ型ロボットと名乗る「ドラえもん」が現れ、未来の道具(ひみつ道具)を渡してのび太をサポートする、というストーリーだ。

 多くの人にとって身近な存在でもあるドラえもんを、社会の縮図として捉えた一冊が『読解!「ドラえもん」講座』(中川右介/イースト・プレス)だ。著者の中川右介氏は、冒頭で『ドラえもん』は私たちの生活に入りこみ「空気のような存在」になっているため、有名でありながらもっとも論じられることがなかったと語っている。

『ドラえもん』が描くもの、とくに「ひみつ道具」については、現実世界には存在しないものであり、たとえ二十二世紀になっても実用化不可能と思われるものが多い。(中略)ところが、『ドラえもん』で描かれる人間関係は、現実世界の縮図であり、デフォルメでもあり、さらには、何かを隠蔽することで主張しているとも思われる、奥の深い、とても出前迅速・落書無用なものではない。
 本書は、『ドラえもん』のホンワカパッパな考察である。

 後半は、かの有名な「ぼくドラえもん」の歌詞をオマージュしたものだが、はたしてどのような考察なのか。その一部をご紹介しよう。

■ドラえもん教育学〈登場人物のスクールカースト〉

 学校のクラス内でいつの間にか発生している人気の序列を示す「スクールカースト」。古くからクラス内の序列は存在していたが、その現象に名前がついたのはごく最近のことだろう。中川氏は小説『桐島、部活やめるってよ』で描かれたスクールカーストの現象にドラえもんのキャラを当てはめて綴っている。

金持ちであるスネ夫は、「イヤなヤツ」としてネガティヴに描かれている。そして、スネ夫も小学生時代から、仲間ハズレにされることがある。背も低くスポーツも得意ではない。高校生の段階で金の力で人気者になれるとも思えない。むしろ、金持ちであることからいじめの対象となり、金を貢がされたりする可能性のほうが高いのではないか。

 また、小学生時代から「のび太のくせに、生意気だ」といわれているのび太も、高校生になってもカースト上位にいる可能性は低い。腕力で威張り散らすジャイアンは、高校で運動部に入るかもしれないが、もともと「町内でいちばんの嫌われ者」であり、上位カースト入りは難しいだろう。

おそらく、高校生の野比のび太は最下層にいる。下位カーストにいる高校生のジャイアンやスネ夫はコンプレックスを抱いているので、その捌け口として自分たちの仲間のなかでももっとも弱い野比のび太をいじめの対象とする。
しかし、それでものび太はジャイアンたちと絶縁する道は選ばない。そんなことをしたら、ほんとうにひとりぼっちになってしまうからだ。

 ドラえもんの主要キャラクターたちには、なんとも世知辛い将来が待っているのかもしれない。そして、しずかちゃんこと「源静香」がどのカーストに属し、彼らとどのように接するようになるのか。これらのホンワカパッパな考察は、ぜひ同書を手に取って確認してほしい。

 この『読解!「ドラえもん」講座』では、教育学のほかにも政治学や書誌学など、あらゆる学問からドラえもんを深く考察している。生誕50周年を機に、ドラえもんの新たな解釈に触れてみるのも一興だろう。

文=とみたまゆり

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