双子の姉は神殿に引き取られたが、捨てられた妹の方が実はホンモノ…!? モフモフとやさしい主人公に癒される!

マンガ

公開日:2020/9/12

『双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。』(雪:著、池中織奈:原作、カット:キャラクター原案/KADOKAWA)

 日常生活でもアニメや漫画でも、心やさしい人が虐げられ、「なぜこの人が損をするんだ…!」と思わず怒りたくなるような理不尽なことがある。その一方で、嘘つきでずるい人が得をする様子を見ていると、正しく報われるのが前者でないことが悔しくてやりきれない。そんな時、「もっと幸せになるべきなのはあっちの方なのに!」と念を送ってしまうのは私だけではないはずだ。
 
『双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。』(雪:著、池中織奈:原作、カット:キャラクター原案/KADOKAWA)は、そんなモヤモヤとした気持ちを救ってくれるような、やさしい女の子が認められていく物語。原作はWEB発のライトノベルで、ライトノベル版は現在4巻まで刊行されている。ここで紹介するコミカライズ版は、8月に2巻が発売されたところだ。

突然家族に見放されて森に捨てられた双子の妹は…

 本作品の主人公は、とある村で双子の妹として生まれた女の子・レルンダ。美人で両親に愛されてきた姉のアリスとは違い、レルンダはいつも家族に虐げられ不遇の扱いを受けていた。そんなある日、村に神官がやってきて、姉のアリスが「神子」として大神殿に引き取られることに。両親はこれに乗じてアリスとともに大神殿で暮らすことを希望し、邪魔になったレルンダを森に捨てて去ってしまったのだった。

 捨てられたレルンダは、最初は行く当てもなく途方に暮れていたものの、森の中でスカイホースに拾われてグリフォンの巣へ。グリフォンたちに迎え入れられ、“契約”をして一緒に暮らすことに。その後、獣人の男の子・ガイアスに出会ったことがきっかけで獣人の村に移動し、その先でさまざまな獣人や人間と出会っていく。そしてその中で、実はレルンダこそが「神子」かもしれないという疑惑が浮上するのだが――。

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 村で家族と暮らしていた時のレルンダは、服はボロボロ髪もボサボサで、何も持たされず森に捨てられてしまうような、愛されずに育った子どもだった。だが、森の中で出会った動物たちに受け入れられ、レルンダは少しずつ本来の笑顔や無邪気さを取り戻していく。そして自分にも何かできることはないか、とブラシでグリフォンたちの毛をとかしてあげたり、率先して村人たちの手伝いを頑張ったりと、とにかく目の前の相手と親身に向き合い、たしかな関係を築いていく。

 レルンダは神子であることで森に捨てられても食べ物に困らず、魔物に襲われることもなかった。おまけにグリフォンと通じ合ったり治癒能力があったりと特別な力もあり、いるだけで無自覚にさまざまな加護をもたらす。女版のいわゆる“俺TUEEE系”にあたるだろう。しかし、本人が今まで恵まれていなかったこともあり、些細なことで幸せを感じるどこまでも健気な子で、強いというよりひたすら尊い。無邪気な可愛さでガイアスを翻弄し、モフモフの動物たちと戯れるレルンダを見ていると、「この笑顔を守りたい!」と思わずにはいられない。

 2巻では、王都でアリスの教育係をしていたという研究者・ランドーノも登場。ランドーノはレルンダこそが神子であると話し、レルンダが選び取った道を見届けたいと村で行動をともにしていく――。レルンダは、いったいどんな道を選び取っていくのか?

 この先も困難が待ち構えているのだろうが、彼女ならきっとそれも乗り越えていけるはず。日々の理不尽に疲れたら、正義をもった主人公がきちんと報われる本作に、レルンダのやさしさに、そして登場する数々のモフモフたちに癒されてみては?

文=月乃雫