会社は「小さい」ままの方が良い? 自分の暮らしを中心に据えるこれからの時代のビジネスの形

ビジネス

公開日:2020/9/25

ステイ・スモール 会社は「小さい」ほどうまくいく
『ステイ・スモール 会社は「小さい」ほどうまくいく』(ポール・ジャルヴィス:著、山田 文:訳/ポプラ社)

 私たちは何のために働いているのか。生活のため? もしそうなら、大切な日常が仕事上の煩わしい人間関係や長時間労働によって蝕まれてしまっては元も子もないだろう。私たちは仕事との向き合い方を見直すことで、より充実した毎日を送れるようになるのではないか。

 そのヒントをくれるのは、『ステイ・スモール 会社は「小さい」ほどうまくいく』(ポール・ジャルヴィス:著、山田 文:訳/ポプラ社)だ。著者のポール・ジャルヴィス氏によれば、近年、会社を急激に大きくすることに興味を持たず、従来型の成長に抗うことで利益を得ている人が増えてきたという。それは資金難にあえぐテクノロジー・スタートアップやぎりぎりの生活を送る人たちだけではなく、年に数十万ドルから数百万ドルを稼ぎ、一般の人よりも楽しく仕事をしている個人や企業でも同様だという。

 ジャルヴィス氏は、そういう人たちを「カンパニー・オブ・ワン」と呼ぶ。会社の規模を大きくしていくことは、必ずしも利益をもたらすわけではない。たとえば、スターバックスは世界中に何百も店を開いたが、さらに速く規模を拡大しようと手のこんだ商品を加えた結果、ブランドがぼやけ、同じぐらい急速に規模を縮小する羽目になった。無闇に会社を大きくすれば、その分、会社の柔軟性が失われ、目的がブレやすくなる。私たちが目指すべきは「大きく」することよりも、「より良くする」こと。オンラインが当たり前の今の時代、コストをかけなくても会社を「より良くする」方法はたくさんある。使用するリソースや人員を増やすことなく、もっと効率よく仕事ができるようにする方法を見つけるのが「カンパニー・オブ・ワン」なのだ。

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 彼らは、自分が望む暮らしを中心に仕事を組み立てている。決して逆ではない。自分自身にうまく機能するかたちで仕事を最大化しようとするのだ。優秀な社員にうまく自由を与える企業は、社員を「カンパニー・オブ・ワン」のような存在として扱い、社員に権限を与えていることが多い。たとえば、Googleはエンジニアに「20%の時間」を与えている。勤務時間の20%は自分のやりたい仕事をしていいという仕組みで、Googleがリリースする製品やプロジェクトの半分以上が、この「20%の時間」に生み出されている。また、完全成果主義労働環境(ROWE)を導入する企業もある。そこでは、社員のスケジュールは決まっていないし、会議への出席も自由だ。仕事時間の使い方は完全に社員に委ねられる。それに、会社全体の利益につながるのであれば、自分の好きなように仕事に手を加えてもいいのだ。

 自分の生き方と仕事を一致させる働き方を諦める必要はない。「カンパニー・オブ・ワン」の思想は、会社の経営者だけでなく、一企業の平社員でも必要な考え方だろう。ジャルヴィス氏は、ゼロから「カンパニー・オブ・ワン」を立ち上げる方法を自身の経験をもとに教えてくれる。自分らしく満足のいく仕事を継続し、十分な収入を得たいと願う人たちはこの本に書かれたメッセージに共感させられるだろう。自分と仕事との関係を見直すきっかけとなるに違いないこのビジネス本を、是非ともあなたも読んでみてほしい。

文=アサトーミナミ