小学生1年生でも自分のユニホームは自分で洗え! 80歳“おばちゃん”の野球チームに学ぶ、自立を促す子育て術

出産・子育て

公開日:2020/9/27

親がやったら、あかん! 80歳
『親がやったら、あかん! 80歳”おばちゃん”の野球チームに学ぶ、奇跡の子育て』(棚原安子/集英社)

 子育てには悩みがつきもの。おまけに今年はコロナ禍で「子どもが家にいる時間が増えて大変…」と嘆く人も多いことだろう。だが、こんな時こそ、子どもを成長させるためのチャンス。今こそ子どもとの向き合いかたを見直してみるべき時なのかもしれない。

『親がやったら、あかん! 80歳“おばちゃん”の野球チームに学ぶ、奇跡の子育て』(集英社)は、子どもの自立を促すメソッドが詰まった一冊。著者は、大阪府吹田市の少年野球チーム「山田西リトルウルフ(以下ウルフ)」の名物指導者“おばちゃん”こと棚原安子さんだ。80歳を過ぎた今でも内外野に正確なノックを打ち分けるなど、現役バリバリ。日本中でメンバー不足に苦しむ少年野球チームが多いなか、ウルフは、部員140人を誇り、いつも大盛況だ。その理由は「このチームに入れると、子どもを育ててもらえる」と評判だから。礼儀から電話の受け答え、箸の使い方まで、徹底指導。部費はたったの月1,000円程度で、その他の運営費は、就労体験をかねた団員全員による古新聞回収のアルバイトでまかなう。そんな50年にわたる子どもたちへの指導で培ったノウハウと哲学は、子育てに迷う親たちのヒントになるに違いない。

小学1年生でも例外ではない!自分のユニホームは自分で洗って当たり前!

 ウルフは、「野球を通し世の中で働ける子を育てる」という理念をもって活動している。野球の技術よりも、「生きる力を身につける」ことに重きを置いた指導を行っているのだ。たとえば、ウルフには、他の少年野球チームにありがちな、保護者による「お茶当番制」は存在しない。練習にもってくる飲み物の用意は当然のこと、洗濯や食事の準備、片付けは、すべて子どもたち自身がやるべきことだと、子どもたちにも保護者にも徹底して指導している。それは、小学1年生だろうと例外ではない。今の親の多くは、子どもの身の回りのことをやってあげることが優しさだと勘違いしていると棚原さんはいう。だが、それは本当に将来子どものためになるのだろうか。自分のことを自分でやる習慣をつけておかないと、後々苦労するのは、子ども自身なのだ。

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親離れ、子離れの第一歩「大阪駅まで一人旅」

 また、ウルフでは、子どもたちの自立を促すための恒例行事がある。それは、4年生に上がる前の春休みに子ども一人で電車に乗って大阪駅に行かせるというもの。大阪駅まで電車で15分程度。電車に乗る機会がまだ少ない子どもにとっては立派な「一人旅」だ。子どもたちには「行き帰りの道も親に聞いて行くんやない。切符の買い方から勉強、全部自分で調べて、責任持って行ってこい!」と言って送り出している。今は子どもに構いっきりの親が多く、子どもも親に甘えて頼りっきり。「親子を一度離さなあかん」というのが棚原さんの持論だ。子どもの後ろをついていく親もいるようだが、親も子の姿を見るとたくましく感じて、その後の接し方も変わっていくだろう。

 子どもをいつまでも子ども扱いせず、一人の青年、大人と同等の扱いをするウルフの子育て法は、多くの家庭にとって参考になるに違いない。あなたの家では、子どもたちを甘やかしてはいないだろうか。生きる力を身につけさせてあげているだろうか。子育てに悩む人は是非ともこの本を参考に、子どもとの向き合い方を見直してみてほしい。

文=アサトーミナミ