育児放棄の辛い記憶を塗りかえる! 半熟家族が“料理”で成長する物語【レシピ再現】

マンガ

公開日:2020/9/26

『半熟ファミリア 腹ペコ兄妹の熟成レシピ』(羽鳥まりえ/ぶんか社)

 忙しい毎日を送っていると、普段の食事は「とりあえず何でもいいや」と思ってしまいがち。でもあとになってみると、その時その時の食生活は案外思い出として残っているもの。「子どもの頃食べた〇〇が忘れられない」「あの店で食べたあれが食べたい」と、料理を見て思い出すものがある人は、決して少なくないはずだ。
 
『半熟ファミリア 腹ペコ兄妹の熟成レシピ』(羽鳥まりえ/ぶんか社)は、そんな食に関する思い出の光と闇が描かれる、ハートフルグルメコミック。本作品の主人公は、父親違いでずっと別々に暮らしてきた歳の離れた兄妹・幸泉朔太郎と筆谷楓子、そして作家で2人の叔母に当たる筆谷あかりの3人。朔太郎は10歳の時に父親を亡くし、あかりに引き取られて一緒に暮らしていた。そんな中、あかりが施設に預けられていた楓子を引き取ったことで、3人での生活がスタートする。
 
 朔太郎は楓子と打ち解けようと、子どもが喜びそうな可愛いごはんを作って楓子に歩み寄ろうとしていた。しかし楓子は、手間をかけたおかずばかり残すなど朔太郎を拒絶するような態度ばかり。いったいどうしたものかと手をこまねいていたところに、あかりの知人から熟成肉が届く。この熟成肉をステーキにしてみんなで食べたことがきっかけで、楓子が反抗的な態度を取っていたのは「みんなで食事がしたかった」からだと判明する。
 
 楓子はいわゆる“育児放棄”をされて育っており、家族と一緒に食事をしたことがなかったのだ。以前の食事は毎日同じレトルトカレーをパウチのまま与えられるのみ。6話目の「2日目のカレーうどん」では、カレーによってフラッシュバックした楓子のトラウマも描かれる。そんな楓子の「食」に関する悲しい事情を知ったあかりと朔太郎は、ここから楓子と楽しい思い出づくりをしようと一緒に食事をするようになり、時には料理を手伝ってもらうなど、家族としての絆を深めていく…。
 
 その中でいろいろな料理やその作り方が紹介されるのだが、これがまた本当に作ってみたくなる魅力的な料理ばかり。本作に登場する料理の中から、手軽に作れそうなものを実際に作ってみた。

3皿目「真夜中のみそラーメン」


 1つめは、あかりと楓子2人で夜中に食べた「真夜中のみそラーメン」。原稿が進まず悩んでいたあかりとトイレに起きた楓子は、何か食べようと冷蔵庫の中を物色。しかし冷蔵庫の中はほぼ空っぽだった。でもたまたまあった白みそを見つけた楓子が「みそがあるなら…みそラーメンができるんじゃないかな!?」と目を輝かせ、置いてあったそうめんを使ってのみそラーメン作りにチャレンジすることに。

 作り方は、水、みそ、めんつゆ、鶏がらスープの素、にんにく、オイスターソース、ごま油でスープを作り、茹でたそうめんと合わせて好みの具材をのせるだけ! 具材については特に描かれていないが、イラストを参考に加熱したカット野菜とコーン、バターをのせてみた。結果、驚くほどおいしいみそラーメンに! 楓子とあかりが感動しながら大絶賛していたのもうなずける。そうめんとの相性もとても良い。

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13皿目「ホットアップルパイ」


 続いては、楓子の友達がきた時に作った「ホットアップルパイ」。ある日、学校の宿題で家の手伝いをすることになった楓子。楓子は学校の友達の希望で一緒にアップルパイを作ることになり、友達を家に連れてきたのだが、その日は朔太郎の帰宅が遅い日だった。そこであかりが思いついたのが、餃子の皮と生のりんごを使って作る簡単アップルパイ。

 作り方は、りんごを1cmほどの角切りにして砂糖と蜂蜜を加えて混ぜ、2枚の餃子の皮で挟んでしっかりとふたをして油でカリッと揚げるだけ。好みで粉砂糖をかけても。生のりんごを使っているので程よくシャキシャキ感も残っていて、カリカリサクサクの皮と相性抜群! 面倒な手間もなく15分もあればできてしまうお手軽さ。餃子の皮の程よい塩気がアクセントになっていて、私もあっという間に完食してしまった。

 今回は簡単に実践できる、それでいてひと工夫あるものを選んだため、あかり発案の料理から2品の紹介となった。料理慣れしていないと言いながらこんなものを瞬時に思いつくあかりは、実は料理の天才なのでは…?

 この『半熟ファミリア 腹ペコ兄妹の熟成レシピ』に出てくる料理は、どれも心まで温かくなる、楓子への愛情がたっぷりこもったものばかり。引き取られるまで辛い環境で暮らしてきた楓子には、これからもおいしい料理でもっともっと幸せになってほしいと切に願う。

調理、文=月乃雫

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