138億年かけて「キミ」は生まれた…子どもの「どうやって生まれたの?」に答える、世界一カンタンな進化論

文芸・カルチャー

公開日:2020/10/15

きみはどこからやってきた? 宇宙誕生からはじまる いのちのものがたり
『きみは どこから やってきた? 宇宙誕生からはじまる いのちのものがたり』(フィリップ・バンティング:作、ないとうふみこ:訳/KADOKAWA)

「ぼく(わたし)はどうやって生まれたの?」と、いきなり深すぎる質問をしてくる子どもに、ちゃんと答えてあげられる絵本が誕生しました! 前述の質問に「おかあさんのお腹のなかでね…」と答えるのもいいですが、時には生物の進化に目を向けて、「キミの歴史は138億年前から始まっていたんだ」なんて、話してみるのはいかがでしょうか。

『きみは どこから やってきた? 宇宙誕生からはじまる いのちのものがたり』(フィリップ・バンティング:作、ないとうふみこ:訳/KADOKAWA)は、宇宙誕生から人間が生まれるまでの進化の過程を、世界一やさしく教えてくれる絵本です。

生物や進化に興味をもつきっかけになる本

きみはどこからやってきた? 宇宙誕生からはじまる いのちのものがたり

はるかむかし 宇宙は、オレンジ1こよりも
ずっと ずっと 小さいところに、ぎゅうっと つまっていた。

 この絵本は、こんな一文から始まります。神秘に包まれた広大な宇宙が、手のひらにのせられるような「オレンジ1こ」より小さかったなんて! その後、オレンジみたいな宇宙は大爆発して、“アイスクリームをたべるくらいの時間で”、宇宙のもとになる小さな粒がうまれたとか。“進化論”というと難しく聞こえるかもしれませんが、この絵本は、子どもと同じような目線になって教えてくれるから、本当にカンタンです。

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 しかも、子どもの心をグッとつかむようなユニークな表現やかわいらしいイラストがちりばめられています。進化論をあつかった絵本で、ここまで文字数が少ないのはめずらしいのだとか。専門的な科学用語や年代表記は使われていませんが、科学的事実に基づいているそうです。

 その読みやすさに惹かれて、子どもの興味はどんどん広がっていきます。4歳になる筆者の息子は、地球の温度がだんだん下がっていく絵を見て「おみそ汁くらいのあつさ?」と聞いてみたり、“両生類”とだけ書かれた生物を見て「これは何?」と図鑑で調べてみたりと、大いに寄り道をしながら本書を楽しみ、次々と新しい知識を身につけていきました。多くの子どもにとって、この絵本が、生物や進化に興味をもつきっかけになるのではないでしょうか。

地球もいのちも、大切にしなくちゃ

きみはどこからやってきた? 宇宙誕生からはじまる いのちのものがたり

 そうした進化が、人類のみならず、「キミ(=この本を読んでいる子どもたち)」につながっていくのも本書のいいところです。物語は「キミ」が生まれるまで、一度も途切れずにつながっていきます。逆に考えると、「キミ」が生まれるまでには、138億年もの時間がかかっているのです。

 その過程には、恐竜もいるし、両生類もいます。つまり、まったく違う生き物だと思っていたみんなも、じつは私たちのひいひいひいおばあさん。この大きな地球も、元をたどれば、私たちと同じように、“オレンジ1こより小さな宇宙”から始まっているのです。この世界にあるすべてのものはつながっていて、地球はまさに私たちのふるさと。だからこそ、「みんなで地球を大切にしなくちゃね」と本書は投げかけます。同時に、長い年月を経て生まれた自分たちのいのちも今まで以上に大切にしなくちゃ、という気持ちにもなり、大人もまた身が引き締まる思いです。

 恐竜や両生類などの生き物たちは、地球と共存しながら少しずつ着実に進化してきました。それは、海から陸に上がった両生類のように、「知りたがり」の大先輩たちがいてくれたおかげ。我が子もまた、大先輩たちから冒険することの楽しさを学んで、ゆっくりでいいから着実に成長してくれたら、と願うばかりです!

最後のページにはおもしろい仕掛けも!

 各所に漢字が使われ、小学生くらいまで長く楽しめそうな1冊。最後に出てくる、子どもがよろこぶ仕掛けもお楽しみのひとつ! 東京上野の国立科学博物館には、「地球史ナビゲーター」という本書と同じコンセプトの展示があるのだとか。あわせてチェックすれば、生物や進化への興味がさらに広がりそうです。

文=麻布たぬ