「なんでホームレスになったんですか?」14歳の素朴な疑問が社会を変えるきっかけに。失敗した人にも次の道を

社会

公開日:2020/10/11

『14歳で“おっちゃん”と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」』(川口加奈/ダイヤモンド社)

 14歳で炊き出しの活動に参加したある中学生が、ホームレス状態の“おっちゃん”に残酷な質問を投げかけた。
 
「なんで、ホームレスになったんですか? 勉強していたら、がんばっていたらホームレスにならなかったんじゃないですか?」
 
 質問を受けたおっちゃんが語ったのは、家が貧乏で畑仕事に追われ、勉強さえ満足にできなかったこと、中学卒業後すぐに日雇いの仕事を始め、馬車馬のように働いてきたこと、50歳を過ぎた頃から仕事がもらえなくなり、他の経験のなさから新しい仕事にも就けなかったことだった。決して怠惰だったわけではなく、選択肢のある環境にいられなかっただけだったのだ。
 
 それから15年経った今、当時14歳の中学生だった川口加奈さんは、「誰もが何度でも、やり直せる社会をつくりたい」との思いから認定NPO法人Homedoorを運営する。『14歳で“おっちゃん”と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」』(川口加奈/ダイヤモンド社)は、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019、日本を変える30歳未満の30人(フォーブス誌)など受賞歴も多い川口さんによる初の著書だ。

 本書には、14歳のときにホームレス状態のおっちゃんと出会ってからの15年、一貫してホームレス問題に取り組んできた川口さんの歴史が詰まっている。本書を読めば、決してホームレス問題は他人事ではないこと、しかし解決するためには高いハードルがあり、それを越えようと日々奮闘する人々がいることを知ることができる。

 ホームレス状態にある人を、川口さんは親しみを込めて“おっちゃん”と呼ぶ。彼らの中には「もう、死ぬまでホームレスでいい」と考えている人もいるそうだ。そんな人々と接するとき、川口さんたちが重視しているのは、オーダーメイドの支援を提供することだ。一口にホームレス状態と言ってもその要因は複合的で、最近では10代、女性、外国人も増えているという。そんな彼・彼女らに一律の支援を押しつけても、解決には結びつかない。立ち直るルートを多様化することで、彼・彼女らのニーズに寄り添うことができるのだ。

 川口さんは今では、高校3年生のときに思い描いた「夢の施設」を具現化した「アンドセンター」を開設・運営している。ここでは、ホームレス状態にある人が相談しに来た日に緊急宿泊をすることができるようになっているなど、困難な状況にある人が次のステップに進むための活力を蓄えることができる支援がなされる。

「1回失敗したら終わりっておかしくない?」という素朴な疑問からスタートした川口さんのチャレンジの軌跡を読むことができるのは、本書だけだ。

文=えんどーこーた

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