『鬼滅の刃』を共用費で購入!? 穏やかで楽しい“オタク女子のシェアハウス”

文芸・カルチャー

公開日:2020/10/17

オタク女子が、4人で暮らしてみたら。
『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(藤谷千明/幻冬舎)

 仲のいい友人(独身)たちと「もし結婚しなかったら、将来一緒に住もうね」なんて話題で盛り上がったことがある人も多いはず。かくいうアラサーで独身の筆者も、親友と暮らす理想のシェアハウス話をつまみに、幾度となく酒を飲みました。

 先日発売された『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(藤谷千明/幻冬舎)は、著者の藤谷千明さんが3人の“オタク女子”たちと過ごす日々を綴った共同生活エッセイ。

 タイトルにもある通り、本書に登場する4人の女性は、全員何かを推す(応援する)“オタク”な人々。著者の藤谷さんは、ヴィジュアル系を愛するフリーライター。彼女の15年来の友人・丸山さんはフリーランスの服飾作家として生計を立て、『週刊少年ジャンプ』やコスプレを推しています。IT系企業勤務の角田さんは舞台や和装、アイドルを推し、4人目の星野さんはお堅い企業で働きながら、ソーシャルゲームやアニメ、2.5次元舞台の推し活に心血を注ぐ女性。このように、メンバー全員がそれぞれのジャンルに、全力で愛情を注いでいるのです。

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 推しも職業もバラバラな4人は、ツイッターやmixiなどのSNSを軸に出会ったそうです。同居をするまでは、本名も知らない間柄でした。しかし、友人なら誰でもよかったわけではなく、藤谷さん独自の“同居人の基準”があったとか。

「我々は、mixiやツイッターでなんだかんだ10年くらいはつながっている。年単位の長い間、SNSを見ていると、好きなものや推しはもちろんだが、コミュニケーションのとり方、時事ニュースに対してどんな反応をしているかなどで、ある程度の人となりは伝わってくる。たとえば、同じ趣味を持っていたとしても、ゴシップネタにやたらと言及するタイプや推しに対してすごく失礼なリプライをしているタイプとは、ひとつ屋根の下で仲良くやっていけるとは思えない。(中略)大親友のような固い絆で結ばれてなくても、『暮らす』分には、最低限の価値観が近いだけでなんとかなるように思えたのだ。」

 筆者にも経験がありますが、10年以上もツイッターを使っていると、長年相互フォローをしている人も増えていきます。たとえ活発な交流をしていなくても、フォロワーの現況や“人となり”は、なんとなく伝わってくるもの。

 面と向かって会話をするよりも、自分の胸のうちをつぶやくSNSのほうが相手の“素”に近い可能性がありますよね。もちろん、相手を見極める洞察力も必要ですが、SNSでのシェアハウス仲間探しは理にかなっているのかもしれません。

 価値観を共有できる同居人たちが集まったものの、オタク女子たちには「親の反対」や「ルームシェア可物件の少なさ」など、さまざまな壁が立ちはだかります。といっても、アラフォー女子が集まれば文殊の知恵。地に足の着いた方法で壁を乗り越えながら、“快適なルームシェア生活”を送っています。

 何よりうらやましいのは、推しコンテンツをみんなで共有できるところ。メンバー全員が観ていたアニメ『鬼滅の刃』が最終回を迎え、続きを漫画で読むために“共用費”での全巻購入が決まったそうです。共用費で漫画を買う、オタク女子のシェアハウスならではのお金の遣い方ですよね。うらやましい……!

 また、共同生活で気をつけるべきポイントもわかりやすく整理されているので、本気でシェアハウスを検討している人の参考書にも最適です。本書を読めば、次世代の生活スタイルに興味が湧くかも?

文=とみたまゆり