「生きにくいな」という気持ちを代弁してくれる名作

小説・エッセイ

2012/7/5

小説・秒速5センチメートル

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:新海誠 価格:925円

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2007年春。
早朝から渋谷に出かけて、本作の映画を(映画が先で、小説は監督本人によるノベライズなのです)みたときのことは、たぶんずっと忘れられないんだな、と再確認したよ。

劇場映画のコマーシャルで多いのが、「感動しました」とか「全米が震撼しました」とか。そんなヤツですよね。
この作品に初めて触れたときの感想は、「動揺しました」です。「おまえの人生、こんな感じだろ?」と、見透かされたような気がしたからかな。でもそれは、多くの観客に当てはまっていたようですな。全国でこの映画はロングラン上映していましたよ。そして小説が、こうして電子化されてまた流通しているということは、本作の放った強烈なメッセージは今も健在ということなんだね。

物語は、主人公、遠野貴樹の小学校高学年からおそらく30歳くらいまでの半生を飛び飛びに描いた連作短編です。具体的な時代は明記されていないけど、ほぼ著者の年代と一致しているのではないか、と思う。いわゆる団塊ジュニアって人たちのこと。就職氷河期とか、まあいろいろといわれていたけれど。本作の魅力というか魔力は、そういう統計には表れない、「生きにくさ」みたいな風を感じさせていたからだと思うんだ。

あれから5年たって。少しは冷静に振り返ることもできるんじゃないか。そんな気持ちで、ページをめくりはじめたわけですが…。ダメだね。まったく。あいかわらず作品世界にどっぷりと浸かってしまって。冷静に構成がどうとか、ストーリー展開がどうとか、そういうレビューは無理!

でも、今回ひとつだけ気づいたことがあります。
「人の一生は重き荷物を負うて遠き道をゆくがごとし」(徳川家康)
自分だけが! とか、こんな時代に生まれたばかりに! と、悲観してばかりですが、そもそも「人の一生なんて、つらいことの連続なんだよ」というのは、普遍的な概念なのかな、と考える余裕はできましたよ。
生きにくさ。息苦しさ。そんなものを感じている人に、ぜひ読んでもらいたい1冊です。救いにはならないだろうけど、漠然とした不安に形を与えてくれると思うから。


現実の自分がどんな小学生であっても、子どもってこんな感じだよな、と思わせる描写はさすが

結局、「生きにくさ」のひとつの要因は「人間関係の距離感」なんだよね

惰性で生活していない分、若者の「なんとか生きている」という感覚は切実だと思う

第2話より。「遠くに行きたい」のではなく、「なにかを探している」のだと感じられる

種子島でロケットの打ち上げはみましたが、こんな美しい描写はできなかったなぁ。見事です!