「性行為が違法」となった世の中で性に目覚め苦悩する優等生男子の運命は…!? 衝撃の禁断の果実マンガ

マンガ

公開日:2020/11/1

アカイリンゴ
『アカイリンゴ』(ムラタコウジ/講談社)

 中々オープンに語ることは難しいが、恋愛関係を考える時、「セックス」は大切な要素のひとつになると思う。そこに触れずに恋愛の幸せを語るのは難しいし、セックスは「子どもを作る」という目的以外にも、より深いコミュニケーションを得るための手段として、大切にしている人も多いだろう。だが、何らかの事情で、そもそも「性行為」自体が違法となる世の中に変わってしまったら、一体どうなってしまうのだろうか?

 ムラタコウジ先生の『アカイリンゴ』(講談社)は、まるで薬物を禁止するかのごとく、「性行為」を法律で厳しく取り締まる世の中で生きる、エリート高校生のマンガだ。少し先の未来、令和XX年の日本では、性行為が違法とされていた。いつの頃からか、「男性器を女性器に挿入することは不平等であり性行為は男尊女卑 ひいては性犯罪の根源である」という機運が高まり、15年前に性行為等取締法が制定されたのだという。本作の主人公は、そんな世の中で優等生として真面目に生きる犬田光。彼の父はセトリ(厚生労働省性行為取締官の俗称)の幹部として活動しており、光自身も、東大に入り、父のような立派なセトリになることを目標としていた。

 そんなある日、光は「ついに彼女とキスをしてしまった」(※キスは法律違反ではないが校則では禁止されている)と報告する悪友のシバに連れられ、初めてクラブを訪れる。そこでは、酒と音楽にまみれ、そこら中でキスをする男女がいた。さらに、奥のVIPルームでは、激しく絡み合う全裸の男女が何組もおり、その中では、光もファンである、透き通るように美しい人気女優・ウチュラこと宇宙美空も、今まさにセックスを始めようとしていたのである――。

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 本作は「セックスなんかに手を染めるやつなんて人間やめたバカしかいないさ」と豪語し、キスさえも、「キスすると最悪の脳内麻薬『エンドルフィン』が分泌されセックスを誘発する・・!! キスはセックスへのゲートウェイ行為だぞ!!」と警鐘を鳴らす主人公が、違法なはずの性行為を目にして以来、そのことが頭から離れなくなり、日常生活に支障を来す様子が描かれている。しかも、クラブで出会った芸能人・ウチュラは、何かの企みを持ち、突然彼のクラスに転入してきて、セックスを迫る。光のことを「うんこマン」と呼ぶ黒髪美人の幼なじみ・水瀬優は、様子がおかしい光のことを心配するが、清潔感があり、可愛さも秘めた彼は、学園の「歩くアロマ」と名高い、癒し系の美術教師・壇田律からも貞操を狙われていた。

 異常なまでにセックスを嫌悪する母親に育てられ、将来はセトリとして活躍することを目標とし、子作りは人工授精が当然とされている――。そんな環境で生きる思春期真っ只中の光が、性に目覚め、「母親世代はセックスで生まれてきたのに、なぜ今はセックスをしたらダメなのか?」と当然の疑問を抱く過程がジェットコースターのように描かれている。まだ序盤で、本作がどのような物語になるのか見当がつかないが、セックスのない世の中で、人々はどのように恋をして、性衝動と向き合い、結びつきを深めているかはとても気になる。

 頑なに禁止されているものには、とんでもなく魔力や魅力を感じてしまうことがある。ハッとするほど艶やかで美しい女性たちが思春期の男子に迫り来る中、「性行為禁止」という法律はどこまで効力を持つものなのか…。今後の展開に胸を高鳴らせながら期待したい。

文=さゆ