志茂田景樹氏による書評:『10代の「めんどい」が楽になる本』を読んで

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公開日:2020/11/6

10代の「めんどい」が楽になる本
『10代の「めんどい」が楽になる本』(内田和俊、石山さやか/KADOKAWA)

「突然ですが」、という書き出しで本文が始まる本書(『10代の「めんどい」が楽になる本』〈内田和俊、石山さやか/KADOKAWA〉)は10代の中高生を主なターゲットにした自己啓発書として読ませていただきましたが、読み進めるうちに自分もターゲットの1人のような気になってきました。文章が優しく明快で、言い回しに素直なユーモアがこもっているからでしょう。譬え話の使い方も解りやすく巧みです。

 問題提起の漫画部分では、4人の登場人物にそれぞれ本書の内容に大きく関わる、ブレないキャラといった感じで重要な性格を与えています。この工夫も、先の記述はどうだったっけ、と本文を読み返す必要がほとんどなく、内容がしっかり整理されて頭に入ってくるので感心しました。

 実はそんなことよりも、10代の中高生を主なターゲットにしている書にしては著者が上から目線ではなく、読者と同じ目線で、こう考えれば楽になるんじゃないかな、と提案しているところが大変斬新なのです。

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 まるでクラスで誰よりも早く、みんなが知りたい情報を知った同級生が喜んでみんなに話すように、です。だから、読者は、何よ何だって、と興味津々身を乗り出すことになるわけです。

 普通、こういう書の著者はスペシャリストですから教えるという意識が過剰に出て、自然に上から目線のもの言いになってしまうものです。著者の内田和俊さんは人材育成コンサルタントとして著名ですが、その過程で数多くの中高生にカウンセリングを行ってきております。中高生と同じ目線に立って会話を成立させ、共感できるところは共感し、共有部分を膨らませなければ、その心に踏み込めないことを身をもって会得されたのだと思います。

 今は膠原病を発症して車椅子ユーザーになり休止中ですが、僕も幼稚園、保育園、小中学校などで1998年から読み聞かせ活動を続けてきて、子供たちと同じ目線に立つことがどんなに難しく重要なことかは痛いほど経験してきました。

 訪れた先で園長さんとか校長先生が、
「今日は志茂田景樹さんが絵本の読み聞かせをしてくださいます。皆さん、お行儀よく聴きましょうね」
 などと上から目線の挨拶をなさいます。

 子供たちは正直です。僕の読み聞かせに惹きつけるものがなかったら落ち着きなくキョロキョロし私語を交わし始めるでしょう。一緒に素晴らしい世界へ行って楽しんでこようよ、という子供たちと同じ目線が成立すれば子供たちと同じ世界を共に広げることができるのです。

 この書を読んでいて終始感じていたことは、著者が私たちと同じ目線で語り続けている、ということでした。おっとっと、僕は10代ではないか、齢80です。

 10代に限らず、その世代の親の世代、そして、高齢者にも、この書は優しく問いかけてきます。

 もっと楽に生きましょうよ。

 後は読んで体験してくださいね。

文=志茂田景樹

10代の「めんどい」が楽になる本
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