もしもネットにアップした著作物が無断転載されてしまったら…? トラブルを避けるため、知っておきたい「著作権」

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公開日:2020/11/8

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『駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅/玄光社)

 ツイッターやユーチューブなどを使い、個人が自らの創作物を気軽に発表できるようになった現在。モノを創る楽しさを知っている人間にとっては実にありがたいことなのだが、その手軽さゆえに危険性も多く存在する。その中でも注意しなくてはならないのが「著作権」だ。特にSNSなどに、他者の著作物をアレンジしたような作品をアップしている人は、この著作権というものをしっかりと理解していたほうがよい。場合によっては思わぬトラブルに発展してしまうこともあるからだ。『駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅/玄光社)は、著作権に関連して起こりがちなトラブルなどを分かりやすく教えてくれる。

 本書でありがたいのは、著者の川上大雅氏が弁護士であると同時にギャラリーのオーナーでもあるため、クリエイターの立場をよく理解して書かれていることだ。氏に寄せられる相談で、特に多いという内容のものが分かりやすくまとめられており、今まさに困っている人はすぐにでも参考にできるはず。ここではそのうちのいくつかを簡単に紹介していきたい。

ネットにアップした写真やイラストが無断転載・利用されている!

 最近はスマホのカメラも性能が向上しており、いわゆる「映える」写真が簡単に撮影できる。そしてお気に入りの1枚を皆に見てもらいたいと、SNSにアップしている人は多いだろう。しかし、もしその写真が広く拡散され、あまつさえ無断転載されてしまったら……。本書ではこのような場合「1.証拠を保全する」「2.相手方を特定する」「3.警告文を送ってみる」「4.ダメなので訴訟をする」──以上の手順を挙げている。まずは該当URLやスクリーンショットなどの証拠を揃え、相手方のメールアドレスなどを確認。そして使用をやめるよう警告文を送る。それでもダメなら訴訟を検討するという流れだ。もちろん訴訟となった場合は、キチンと弁護士などに相談して進めるのがいいだろう。

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二次創作で作ったものの販売は許されるの?

 二次創作とは、漫画やアニメといった作品をベースに制作した「同人誌」や「造形物」などを指す。本書では「販売には原作者の許諾が必要となるのが原則」としながらも、コミックマーケットやワンダーフェスティバルのような、主に二次創作物の販売を目的としたイベントのケースを紹介している。要はイベントによってさまざまな仕組みがあり、クリエイターは利用規約に則って二次創作物を販売しているということだ。しかし本書でも「二次創作のどれもが権利的には裏づけを得ているものではなく、脆弱な地面の上に乗っかっている」と指摘しているように、一歩間違えれば著作権法違反と判断される可能性もある。最近でも『鬼滅の刃』のグッズを許可を得ずに販売し、逮捕された事例があったが、二次創作物の販売は常にそういった危険をはらんでいることは覚えておきたい。

 本書では著作権についての法律的な基礎知識や実際にあった事例など、クリエイターたちが直面しそうな問題をかなり広範に取り扱っている。だからもし、二次創作などで著作権に関して何らかのトラブルを抱えてしまったら、本書を開いてみてほしい。問題解決の一助となりそうな情報が、きっと得られるに違いない。

文=木谷誠