伝える力を養うためには謙虚さと努力が必要。まずはこの1冊から始めてみては?

公開日:2012/7/9

伝える力 2 もっと役立つ! 「話す」「書く」「聞く」技術

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : PHP研究所
ジャンル: 購入元:電子書店パピレス
著者名:池上彰 価格:710円

※最新の価格はストアでご確認ください。

とあるインタビューをした時のこと。取材対象者の、長年の苦労が報われて今があるといった内容の発言を受けて私は、「それはシフクの時を過ごされたわけですね?」と言ったら、その方は「いやいやシフクなんてことはないよ、キミ〜」と苦笑いをしていました。周りのスタッフも「ですよねぇ」と、その発言に同調。おべんちゃらを言うなぁと思いましたが、はたと気づいたのです。私は「実力を養いながら活躍の機会をじっと待つ」という意味の「雌伏」を使ったのですが、彼は「この上もない幸せ」の「至福」と解釈したのです。長年の苦労が「至福」なんて、そんなにドMじゃないぞよ、という苦笑いだったわけですね。能面のような固い笑顔でその場をやりすごしましたが、改めて伝わらないこともあるものだと思い知らされました。それほど重要な局面でもありませんでしたが。

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さて、ご紹介する『伝える力2』は、ベストセラーとなった『伝える力』の続編です。著者はおなじみ池上彰氏。安定感のある構成と分かりやすい文章で、本作でも「伝え方」「伝える技術」を教えてくれます。

前半は、東日本大震災の時の政府やマスコミの「伝える力」や、自身がテレビ制作の現場で学んだ「伝え方」を解説。ニュースなどの解説を交えながらの展開は、雑学の勉強にもなります。

そして後半では、具体的な「伝える方法」を解説。「企画書はA4用紙1枚に」「業界以外の人と話す際は、業界用語をなるべく使わない」といったビジネスマンも納得の指摘から、「そのツイッターの内容は街中で叫べますか?」というツイッター利用に対する提言まで、いろいろな話題に言及しています。特に第6章「気になる言葉、気になる表現」と第7章「日本語は乱れているのか」では、池上節が炸裂している向きもあり、著者のツッコミにニヤリとしながら読むことができるでしょう(一部は下記の画像とともに紹介します)。また第8章では、自身が「伝える力」に悩んでいた頃のエピソードにも触れています。「伝える力」も一朝一夕で身につくものではないということが分かります。

相手が分かってくれないと嘆く前に、自身の努力を。ということで「伝わらない」を実感している皆さん、まずは本書に触れてみてはいかがでしょうか。


電車の車内アナウンスの「発車サインオン」が「サイン音」だと分かるのにしばらく時間がかかった体験を披露。業界用語を乗客に使ってはいけないという指摘

NHKではどんな番組でも企画書はA4容姿1枚にまとめる

自分が興味を持って学ぶことが、伝える力の向上につながっていく

「~させていただきます」という姿勢は、行きすぎると自信の無さや後ろめたさがあると思われかねない。そのような言い回しが目立った鳩山元総理が政権を投げ出した時には、「ああ、やっぱり」と思ったそう

テレビのリポーターが「~したいと思います」という言い方をするが、「思っているなら早くしろ」とつっこむ池上さん

「こちら○○になります」とは、「これから状態が変化して○○になる」とも解釈できる。この表現が許されるのは、生地の状態で出てくる「お好み焼き」くらいではないかと…。もちろんこれも皮肉

新しく学んだ専門用語や業界用語はつい使いたくなってしまうが、注意しよう。そのままでは伝わらない

謙虚であることが「伝える力」を身につける第1歩