ふと込み上げる「許せない!」という感情は危険? 自分の時間をムダにしないための練習

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公開日:2020/11/19

『いつまでも消えない怒りがなくなる 許す練習』(杉山崇/あさ出版)

 喜怒哀楽は誰にでもあるもので、感情を抑えろといわれてもなかなかできない場面もあるはずだ。なかでも、怒りはときに人の心の奥までもむしばむ。誰かに対してふつふつと「許せない」という感情が込み上げてくると、自分の生活の端々にもさまざまな影響が出てくるが、書籍『いつまでも消えない怒りがなくなる 許す練習』(杉山崇/あさ出版)は、そんな私たちをやさしく諭してくれる1冊である。

許せない感情はエネルギーや時間をムダにする

 そもそも、人はなぜ許せないのか。心理学者でもある著者は、「あらゆる心理は、私たちが幸せになるために必要だから存在しているのです」とやさしく諭す。そう、人間の喜怒哀楽は自然なことで、許せないという感情が込み上げてくるのは、自分の心が自分自身のものであるという証拠でもあるのだ。
 
 ただし、気を付けなければならないのは、許せない感情だけにとらわれてしまっている場合。その思いは「非常にパワフルで、エネルギーも時間もものすごく消費します」と、著者は指摘する。
 
 誰かを許せないという感情が芽生えたとき、考えたくもないのに四六時中その思いが頭の中をグルグル回った経験を、誰しも味わったことがあるだろう。じつは、この状況を心理学では「ルミネーション(反すう)」と呼ぶ。
 
 こうなると怖いのが、とにかく自分にとっての嫌な感情が「世界のすべて」のようにみえてしまうこと。地獄のような世界から抜け出そうと、やがては「自殺を選ぶ」という可能性にもなりかねないという。

理不尽な相手に出くわしたら、「逃げるが勝ち」

 許せない感情が人にどのような影響を与えるのかは、分かった。しかし、その思いが込み上げてくるという状況には、さまざまな理由がある。例えば、相手が自分に対して理不尽な態度をとってきた場合には、その感情を手放せといわれても一筋縄ではいかないかもしれない。

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 しかし、そんな相手に対して「まともにバトルをしても、無意味です」と、著者は断言する。では、どうするべきかといえば、それまでの気持ちをグッとこらえて「感謝の態度」を示すことが役立つという。

 大切にするべきなのは“自分の”人生や時間であって、理不尽な相手に出くわした場合にそれと向き合っていることは無意味だ。それならばいっそ「逃げるが勝ち」を決め込み、その場しのぎでもかまわないので、感謝で攻撃をかわして違う何かに目を向けた方が得。損をせずに生きるためには、欠かせない心がまえだろう。

 さて、本書の最終的な目的は「許せない」と思ってしまう自分すらも許すこと。落ち着いた気持ちで日々生活するために、ぜひとも参考にしてみてほしい。

文=カネコシュウヘイ