ジェーン・スーの動物になぞらえたタイプ別お悩み相談。アラサー、アラフォー女性の抱える問題に斬りこむ!

暮らし

公開日:2020/11/21

女のお悩み動物園
『女のお悩み動物園』(ジェーン・スー/小学館)

 作詞家、コラムニスト、ラジオ・パーソナリティーとして活躍するジェーン・スー。彼女は、ラジオでリスナーの悩みごとに切れ味の鋭い助言、進言を述べてきたツワモノ……いや切れ者。人生の酸いも甘いもつまみ食いしてきたという彼女の新刊が『女のお悩み動物園』(小学館)だ。

 動物園に、草食、肉食、群れで生きる動物、ひとりが好きな動物等々、色々な生態があるように、社会にも多種多様な性格や嗜好の女性がいる。本書は、社会という動物園に暮す彼女たちを動物にたとえ、お悩み相談に著者が答えるというもの。回答はどれも短いが腑に落ちるものばかりだ。

 夢見がちで王子様の登場を待ちわびる「ラクダさん」、思い通りに行かない恋愛をガーガー騒ぎ立てる「アヒルさん」、人を信用しすぎてしまう「ヒツジさん」等々、その選別は(当然)恣意的ではあるがユニーク極まりない。

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 例えば、攻撃的な性格の「ヤマアラシさん」。遠距離恋愛で交際相手と喧嘩中であることについて、著者は「残酷だがこれはダメかもしれない」と述べ、破局を想起させる6つの論拠を提示する。そして、〈私のことが好きなら××してくれるはず〉は〈百年の恋も冷める原因ランキング100週間連続1位と言っても過言ではありません〉という的確すぎるパワーワードを述べる。

 あるいは、適応能力の高い「ヒョウさん」。職場で陰湿ないじめを受けているというウエディング・プランナーに、辛い職場で培った経歴や経験があることを活かし、〈次の仕事が決まるまでは、シレっと働き続けましょう。転職先を3カ月で見つけるなど目標設定するのもアリ〉とアドバイス。

 さらには〈ルールはシンプルです。輝きに満ちた人生を邪魔するものは、即排除。最優先するのは、つねに心と体の安定と幸せ。やり直しはいつでもできる。この3つ〉と後押しをする。

 そう、やり直しはできる。すべてについて完璧な人なんていないし、つらい時に無理をして平気なフリをするべきではない。著者はこのルールを繰り返し説く。しかも、年齢や職種や、彼氏がいるかいないか、既婚か未婚か、子供はいるかいないかといった変数を勘案して、こと細かに相談者に提言。読者は少なくともひとつは、自分に当てはまるものがあるはずだ。その意味では、具体的で実用価値がある本である。

「女の」お悩みというくらいだから、結婚、妊娠、出産、育児など、章を追うごとにアラサー/アラフォー女性特有の相談が増えてくる。著者は待機児童や介護の問題、教育機会の不均衡が女性にばかりふりかかることを指摘。そこで、チームを組んで闘う「イルカ」をロール・モデルのひとつとする。

「女友達は唯一元本割れしない資産」であり、エサ場のありかや敵の居場所など、生きていくための情報を皆で共有しようと著者は提案する。出産後も状況が許せばフルタイムで働きたいし、できるだけ良い条件で職場復帰したいという欲求もあるだろう。そのための生存戦略をシェアできるのが、イルカというわけだ。

 なお、本書に感銘を受けた読者には、出産、子育て、育休、教育などに奮闘する日々を綴った、花田菜々子著『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた 「家族とは何なのか問題」のこと』(河出書房新社)を男女問わずお薦めしたい。

文=土佐有明